夜の山で

普通に考えれば、夏の夜の山の中に女の子が一人で
立っているなどありえないわけなのですが、
見た、と言っている子たちは真面目で嘘をつくような
子らではありませんでしたし、
短時間であれほど正確に「白い服を着た女の子」
と口裏を合わせた嘘をつくように打ち合わせが
出来るとも思えず、一笑にはふせれませんでした。
なので私も他の子供たちもかなりおびえてしまいました。

幸いにして、その後に余談になるような出来事もなく、
翌日からしばらく子供たちの間では話題になったものの、
やがてなにごともない日常に戻っていきました。

しかしいまだに夏になると思うのです。
もしかしていまも夏の夜、あの山の中の教会の前に
白い服を着た女の子は一人で静かに立ち尽くしているのかも、と。
結構な年齢の大人になった今でも、
その光景を想像するとかなりゾッとしてしまいます。