娘の描く絵

そう思いながら、絵を見てみると
そこには俺の上半身と、そして、俺の右側半分を覆い隠すよう立っている黒い影があった

黒い影に覆われた俺の身体はおかしな形に変形していて、俺の顔の右半分は不気味に歪んでいた

「な・・・なんなんだ！　これ！！」

俺は大声を出してしまった

しかし、娘はまったく動じることなく絵を描き続けている
俺の右半分を覆う黒をさらに黒く染める

「な・・なあ、これはいったいなんだい？」

俺は動揺を隠せずにいたが、どうにか優しい声を作って娘に聞いた

「だから、パパだよ」

さっきと答えは変わらない
何を当たり前のことを聞いているのといった調子で答える

「い・・いや、確かにパパはいるけど、この黒いのは何なのかな？　こんなのないよね？」

そう聞くと、これまでずっと動かしていた手がぴたっと止まった

少しの間、沈黙して

「それを口にするのはできないんだって」

そう言って立ち上がりベッドに戻っていた

「あっ・・・。ちょっと、ちゃんと片づけて・・・」

追いかけると、娘はベッドに潜って眠っていた

急いでベッドに逃げ込んで寝たふりをしている・・そういったカンジではなかった
まるで、ずっとそこで眠っていたような、そんな様子だった

俺は何がなんだかわからなかった

絵を描いていた娘は幻だったのか

いや、それはない
証拠にリビングの机にはクレヨンが散らばって絵が残されている

改めて絵を見る

不気味な絵だ
俺が黒に浸食されている

普通の絵ではない