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不思議体験

ブラウンシュガーさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

友達のじいちゃん
長編 2024/03/19 20:25 2,637view
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日が暮れ、僕は帰り支度を始めました。
結局、何のトラブルも無く過ごせたため、また明後日にはここに来れるだろうと思いつつ部屋のドアを開けました。

ドアの目の前に、満面の笑みのおじいちゃんが立っていました。

ヒッ、と言う短い悲鳴を上げつつ、「お邪魔しました」と言おうとした瞬間、
「ヒロくん、鬼、見たことある?」
と聞いてきました。

鬼?鬼って、あの、角が生えてる鬼?
突然の事で頭がグルグル回っている僕は、ふと気がつくと、廊下に倒れ込んでいました。
ナオヤが僕を突き飛ばし、おじいちゃんの腰にしがみついてリビングに押し戻そうとしているとしていると気付くのに数秒を要しました。

その光景を呆然と見つめていると、ナオヤは僕に

「早く出ていけよ!頼むから早く帰ってくれ!」と怒鳴るのです。
我に返った僕は、今行われている目の前の光景が、恐らく異常な何かの予兆なのだと知り、慌てて立ち上がりました。

「ヒロく〜ん、これ見てみぃ。鬼の頭蓋骨よ。すごいやろ〜。」
おじいちゃんが懐から何かを取り出しました。

それは、どう見ても、人間の頭蓋骨の顎から上の部分でした。
骨格標本でしか見たことの無いそれは、まるで人間の死体を土に埋め、白骨化した後に掘り起こしたような、淡くまだらな茶色をしていました。

おじいちゃんの嬉々とした声と、それをかき消さんばかりのナオヤの絶叫を背に受け、大急ぎで靴を履こうとしますが上手くいきません。
仕方なく靴を手に持ち、震える手で鍵を開け、体当たりするようにドアから飛び出しました。

僕が一瞬振り返ると、涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしたナオヤが僕に叫びました。
「ごめんな、ごめんな、じいちゃん、コレ拾ってきてから頭おかしくなっちゃったんよ!

俺たち親友やんな?!
明日も遊んでくれるよな?!」

僕は何も言葉が出せず、靴を掴んで裸足のまま全速力で自宅に逃げ帰りました。

その夜、なかなか寝付けずにその出来事を思い返す中で、全てを察しました。
おじいちゃんがかける「迷惑」の正体、「リュウくん」というかつての友達、そして、2つ隣の学区からという短い距離での転校。

絶対にナオヤを悲しませたくない。と固く決意し、翌日からも変わりなく彼と接し、その話題も一切口にしませんでした。もちろん、誰ひとりとして他言もしませんでした。

その後卒業まで毎日のように遊びましたが、学区の関係で彼とは別々の中学に進学しました。
部活や習い事で予定が合わず次第に疎遠になり、今では彼も、彼のおじいちゃんも、あの「鬼の頭蓋骨」もどうなったかはわかりません。
テレビやネットで認知症の話題を目にする度に、あの日の光景が鮮明に思い出されます。

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コメント(1)
  • 怖かったです(@_@)
    同時に悲しい部分もありました。

    2024/03/19/23:18

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