【short_71】かくれんぼ

児童公園で、この近所の子供らが『かくれんぼ』をしている。
ボクはそれを連れて来た娘と一緒にベンチで見ている。

「チヨミ、ほら、言った通りやってごらん。一緒に遊ぼうって言っておいで」
「う・・・うん・・・」チヨミは戸惑いながらも子供らの方へ向かっていく。

しばらくして、OKが出たようでチヨミもかくれんぼに参加することになった。
どうやらチヨミが鬼になったようだ。多分仲間に入れるための条件なのだろう。
だがそれで良い。ボクは子供らがどこに隠れたかフィールドを確認する。

「もーいーかーい」「まーだだよー」
「もーいーかーい」「もーいーよー」
かくれんぼスタートである。

ボクはチヨミに合図を送る。〈女の子が滑り台の陰にいる・・・〉
チヨミは静かに滑り台の影へ回り、女の子を捕まえた。

そして女の子を連れてボクのところへやってきた。

「これでいい?」

「あぁ、いいよ、チヨミ。ご苦労様。これでキミは晴れて自由の身だ。
もう好きな所へ行っていいよ」

「この子はどうなるの?」

「キミと同じさ。しばらくしたら、誰かと入れ替わりで逃がしてあげるよ。心配するな」

そう言って男は目にも止まらぬ速さで女の子をトランクに詰め込み、パチンと錠をかけた。

チヨミは(悪いことをしたな)とは思ったが、チヨミの心はもうとっくに死んでいた。

チヨミと男は別々に分かれて公園を後にした。