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妖怪・風習・伝奇

太山みせるさんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

屋根裏の蛇女
長編 2023/12/31 00:22 5,633view
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千代の父親は村の仲間に相談をした
するとその中の一人、太一という男が千代を嫁にもらいたいと言い出した
実は太一は子供の頃から、千代に片思いをしていたというのだ
優しく真面目な太一なら、きっと千代を大切にしてくれるはずだ!
さっさと結婚させようと考えて、二人の婚約を勝手に決めてしまった

千代は抗議をしたが、聞き入れてはもらえなかった
何としても結婚を阻止したかった彼女は、髪を丸坊主に剃った

丸坊主の千代は、恐ろしいほど蛇に似ていたという
肌は人とは思えぬほどに白くなり、鱗のようにひび割れた
黒目は大きくなり、両目の間隔は離れた
鼻はのっぺりと低くなり、口は口角が上がり、大きく開くようになった
本当に蛇に似てきたと村中で噂になった
そんなになっても、太一の気持ちは変わらなかった
本来ならば有難いことだが、千代は蛇になることに夢中で、人間との結婚は心底嫌がった

結婚の前日、千代は自宅の屋根裏で首を吊った

それから毎晩、屋根裏を何かが這い回る音がするようになった

だがそれも四十九日が過ぎてからは、そんなにしなくなった

「今でもたまに深夜、屋根裏に千代さんはやって来て、這っているんだよ」
祖父はそう言って話を締めくくった

誰も直接見た訳ではないが、エピソードから屋根裏を這っていたのは、千代さんなんだろうなと清美は思った

※※※

それから数ヶ月後、真夜中に清美は布団の中にいたが、なかなか寝つけないでいた

暫くすると天井の上を、ズルッズルッと這う音がして来た
(これは!)
千代さんなの?
そう思ったとき、思いがけず大きく、
「千代さんなの?」
なんと声が出てしまった!
這う音が、ちょうど清美の上あたりでピタッと止まった
(えっ、やばい!)
ガタッと、天井板が外れる音がした
その隙間から誰かが覗く

真っ白い顔だった
髪も眉毛も無い
目が黒目だけで、顔の側面についている
鼻は無くて鼻穴だけが目立つ
口から出ている舌は細長く、先が二つに割れている
白い蛇のようだが、顔の大きさは人間くらいある
どこか人間ぽく、蛇になりきれていない
そしてとても女性的だ
“蛇女”…そんな言葉がピッタリだと思った
絶句している清美に、無言で千代らしき蛇女は頷いた
コクコクコク…
「え?」
(あぁ!千代さんなのね!)
先程の「千代さんなの?」の呼びかけに『そうだ』と言っているのだ
その後、暫く二人は見つめ合った
「おやすみなさい」
千代はそう言って、去って行った

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コメント(4)
  • kanaです。待ってました!!太山さん!!

    2023/12/31/01:47
  • 文書力が凄い。
    面白かったです。

    2023/12/31/02:03
  • 怖いというより、面白い。ラストがね。

    2023/12/31/21:13
  • 有難うございますm(_ _)m
    今年も宜しくお願い致します

    2024/01/01/15:55

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