奇々怪々 お知らせ

不思議体験

太山みせるさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

サケクレー
長編 2024/01/19 23:25 4,587view
2

百合は40代前半で、15年ほど付き合ってい
た彼氏の裕太に振られてしまった

ずっと裕太からのプロポーズを待っていたが何もないので、一度30代で自分からプロポーズをしたことがある
その時に結婚はしたくない、一生独身で誰かと一緒に暮らすのも嫌だから、結婚したいなら別れると言われたそうだ

結婚したかったが、裕太と別れるのは嫌なので、そのままズルズルと過ごして、気がついたら40を超えていた

時々結婚のワードを出してはみたが、その度に難色を示されて、百合はとうとう結婚を諦めた
恋人として会えるなら、それでも良いと思うようになったのである
百合は裕太を心底愛していた

だがそんなある日、裕太から別れて欲しいと告げられる
「済まない百合、たった1回だけ浮気をしてしまった
!浮気相手とはもう会っていないが、この間連絡が来て、妊娠したと言っているんだ!子供の為にも結婚するしかないから、お願いだから別れて欲しい」

2人は別れた

(今までのは何だったんだ……)

15年分の思い出がある
それなりに仲良くやってきたと思っていた
お互いの誕生日、クリスマス、バレンタイン…行事ごとに毎年イベントをやっていたではないか

当時の百合はアパートに一人暮らし、その部屋にも裕太の思い出の品はたくさん置いてあった
それを見る度、怒りが湧き上がる!そして悲しくなる
夜眠る前の酒量も増えた
仕事のミスも多くなった
もう何をやっても楽しくなかった

そんなある夜、いつものようにやけ酒をしていると、ベランダのカーテン越しに男と思われる人影が見えた

不審者かと思い、バッとカーテンを開けたら誰もいなかった
飲み過ぎによる幻覚かと思ったが、次の日も、そのまた次の日も毎晩同じことが起こった
しかも人影はだんだん濃くなっている

百合はあまり怖くなかった
悲しみが感情を薄くしたのだろう

何日目かの夜、そいつが喋った
『サケクレー』
見ると人影はしゃがみ込んで、ブルブル震えている
そして、低い押し殺したような声で、
『サケクレー』
と言っている
それしか言わない
百合はベランダのドアを開けた
開けると誰もいない
そこにコップに入れた清酒を置いた
ドアとカーテンを閉めると、ゴクゴク酒を飲むような音がした
翌朝、コップを見たら空になっていた

1/4
コメント(2)
  • 途中からミステリーみたいな展開になっておもしろかったです(kana)

    2024/01/20/00:40
  • ストーリーが面白かったです。
    ただ、浮気された男と復縁し義母になって幸せと思うのだろうか🤔

    2024/01/20/01:13

※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。

怖い話の人気キーワード

奇々怪々に投稿された怖い話の中から、特定のキーワードにまつわる怖い話をご覧いただけます。

気になるキーワードを探してお気に入りの怖い話を見つけてみてください。