追いかけてくる※※

Tの第一印象は、なんだか淋しいところだな、という感じだった。

周りに家はあるけど住宅街って感じでもない。
隣の家もどこか寂れている。アパートから百メートル離れた所には竹林がみえた。とにかく全体的に閑散しているという印象を受けた。
Tはそれでも良かった。
新しい生活に胸を踊らせていたからね。

Tとお袋さんは、早速中に入って親父さんと感動の再開を果たしたよ。
Tはキョロキョロと家のなかを見回した。それであるものを見つけてぎょっとしたんだよ。

ねえ、Tは何を見て驚いたと思う？

なんとね、御札のような紙が壁に貼ってあったんだよね。

Tはその御札を見て、それはそれはびびっていたんだよね。
そのあとお袋さんも御札の存在を認識したのか顔を強ばらせていたよ。親父さんはそんなお袋さんとTの様子に気が付いた。
親父さんは

「どうしたんだ？」

と二人に尋ねた。

「あ、あれ…」

お袋さんは恐る恐る御札を指差した。
親父さんはお袋さんの指差す方向を見たが、やがて肩を震わせ笑いを堪えているではないか。
その反応をみて流石のお袋さんもキレたらしい。

「何がおかしいのよ！」

Tは両親の様子を黙って見守っていた。
親父さんはニヤニヤしながら言った。

「あれはね、虫除けの札なんだよ」

「虫除けの札？」