顔が見えないストーカー

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しかし、なぜか友達としての状況は少しひねくれてしまった。

私は気づいていた。バイトの帰り道、Aが私の後をつけていること。

友達としてはさらに仲良くなっている、という認識を私は持っていたので、Aがつけてきていることに気づいた私は「よー、なにしてんのー？」と声をかけることもあったのだが、なぜか声をかけるとすぐにどこかに居なくなってしまう。さらに謎なことに、次の日会うといつも通りのAなのだ。

ある日、我慢ができなくなって聞いた。

「Aさ、バイト帰りの夜道で俺をつけるのやめてくれよ、ちょっと怖いよ」

というと、Aは驚いた表情で

「私そんなことしてないよ！昨日は先輩と飲んでたからその時間はいないよ！」

と、インスタのストーリーで、飲み会にいる様子のAを見せてきた。16時間前。確かに、私がちょうどバイトから帰ってる時間だが、Aはアリバイ的に私のストーカーなんてすることはできない。

であれば、私の後をつけているのは誰なんだ？？？

Aは、「やっぱモテるんだよ～バイト場の子なんじゃない？でも彼女いるからその子もフラれるねｗｗ」と冗談めかしくいってきたので「うるせぇｗ」といった感じでその話は終わった。

髪型とか服とかはもう完全にAのそれであったため、勝手にAにつけられているんだと勘違いしていたが、だったら誰が俺をストーキングしているのか？と気になった。

その日もバイトだったため、ストーカーの正体を絶対に突き止めてやろうと思った私は、その帰路は彼女ではなく、Aと電話しながら帰ることにした。インスタのストーリーなんて、アップロードする時間を操作できるからそこまで信用できるアリバイではないと感じた。本当にAではないなら、Aによく似たそのストーカーがもし今晩いたとしても、私と電話できていることが確たるアリバイになるからである。

バイトが終わって、すかさずAに電話してみた。Aはすぐに電話に出た。電話の向こうから、かすかに「人志松本のすべらない話」が聞こえている。確かにこれは、Aは今自分の部屋にいるなと思った。

しかし、Aと話しながら帰るこの夜は、そのストーカーは出現しなかった。「（ほら、やっぱりAがいつもストーカーしてたんじゃん・・・）」と心の中で思い、またこの電話中に告白されたらどうしようなんて頭の中によぎっていた。

もう帰り道は、アパートの近くの公園まで来ていた。例の、Aを介抱した〇公園である。

そこで私は目を疑った。

Aによく似たいつものストーカーがいる。公園のベンチに座ってるではないか。顔暗くてよく見えないが、間違いなくAだ。公園のベンチで、スマホを触っている。今回はつけてくるんじゃなくて、公園で待っているのか・・・。と思った。

しかし、私はまだAと通話がつながっている。Aの電話の向こうから、「ピンポーン」と鳴る。「あ、ウーバーイーツ届いたからちょっと待ってて！」と、トタトタ音を立てながら玄関に行く音も聞こえる。配達員の「あざしたー」も聞こえた。

であれば、公園のベンチに座っている、まるでAみたいな奴は誰なんだ？？？？

今日の昼、私はAに会っている。ストーカーは、その時の服と全く一緒の服である。Aは、茶髪だが一本赤いメッシュを入れている。それも同じである。Aとしか言いようがないが、Aはちゃんと今家にいて、今私と電話している。

「・・・いた」

私は少し身を潜め、ささやくようにAに言った。

「ほらー、いったじゃん私じゃないって！K君（私の名前）のことはあの時ほんとに恋愛感情で好きだったけど、フラれたからと言ってストーカーなんてしないよぉ～！！」

と言いながらAはウーバーで届いたご飯を食べている。

間違いなく、公園のベンチにいる女と私と今電話でしゃべっているAは、別々の存在である。

私が息をひそめていると、足元に何かが触った。警戒していたせいか、ひどく驚いてしまったが、それはここの公園に住み着いている、人懐っこいネコだった。

ドキドキしていたが、ネコのおかげでちょっと気がほぐれた。しかし、この人懐っこいネコが、踵を返して威嚇し始めた。どうしたの？って思ったが、それは明らかに、ベンチに座っているAによく似たストーカーに向けられた威嚇だった。

「あー威嚇なんかしちゃだめだよ」

と猫をなだめていると、Aが