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ヒトコワ

Nさんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

ホームレスから盗んだガラケー
長編 2023/03/06 18:15 48,933view
6

このガラケーはヤバい。
というか、この持ち主のホームレスがヤバい。
俺は何てものを持ち帰ってしまったんだと後悔した。

このガラケーを持って交番に行くべきだろうかとも考えた。
だが、よくよく冷静になってみれば、保存された画像が例え本物だとしても、あのホームレスが自分で撮影したものだとは限らないではないか。
どこかのサイトでダウンロードした、そういう趣味趣向の人なのかもしれない。
その場合、俺自ら交番に『ホームレスの私物を窃盗しました』と自首するようなものだ。

もしあのホームレスが犯罪者ならばそれこそこんな凶悪事件を引き起こして捕まっていないわけがないと、考え直した。

ならば、このガラケーは当初の予定通り、ホームレスが不在の時を狙って黙って返しに行く方が賢明だと判断し、俺はガラケーをベッドに放り投げ、気を紛らわせるためにパチンコに出かけた。
といっても1パチだけど。

それでパチンコの帰りにラーメン食べて、コンビニで求人誌もらって家に帰ると、なぜか鍵開いてた。
「あれ?締め忘れたか?」と首を傾げながら中に入ると、廊下(キッチンと一体型の通路)を過ぎたところでガチャッて風呂場のドアが開いた音がしたかと思えば、背後から押し倒されて「ウワッ!イデデデデデ!」って感じで悲鳴を上げる間に、腕を後ろで絡めとられながら突っ伏し、背中に乗っかられる形で取り押さえられてた。

何が起きてるのか分からなかったが、後ろから誰かに乗っかられてるのは理解できた。

でも、何か叫ぼうと「だ、誰か」と言いかけたところで喉元に何か冷たいものを当てられて「静かにしろ」とドスの効いた声を耳元で囁く。
一気に体温が下がった気分だった。

「は、はははは、はあ、いいい」てな間抜けな返事をする俺。
マジで怖くてまともに返事ができなかったけど、俺を押さえつけてる人物も俺が抵抗しないと思ったのか、腕を放してくれた。
同時に背中からも退いてくれたから、俺は解放されるなりゆっくりと後ろを振り返った。
それはもうビビり散らかしてたから恐る恐ると。

そこには全く知らないおじさんが立ってた。

なんだか小汚い中年のおじさんで、体臭も独特。
咄嗟に「え、誰」と口ずさむと、おじさんは俺の目の前にしゃがみ込んで「兄ちゃん、ワシから盗ったもんがあるやろ?なあ?」と無精髭の顔を近づけてくる。
口臭は酒臭かったが、おじさんの「盗ったもの」という発言から、このおじさんが昨日のホームレスという事にようやく気づいた。

「あ、あの、えっと…」と言い淀んでいると、おじさんは「どこや?」と俺の襟を掴む。
掴まれただけなのに大木を目の前にしたような威圧感だった。
殴られると思った俺は即座に「あ、あそこです」とベッドを指さした。
おじさんは俺の襟元を突き飛ばすようにして放すと、ベッドの布団をはぎ取る。
すると、毛布に埋まって隠れてた例のガラケーがゴトッと床に落ちた。

ガラケーを拾うおじさんは、その場でケータイを開く。
しかし、すぐに眉間に皺を寄せて俺を見やった。

3/5
コメント(6)
  • kamaです。怖いですね!僕だったらスライディング土下座してます!

    2023/03/06/19:28
  • 色々ヤバすぎだろ

    2023/03/06/20:13
  • 絶対に他人の持ち物を盗んではいけない!マジでヤバい!

    2023/03/20/23:03
  • こえー
    ヒトコワは生々しくて嫌な読後感がありますね

    2023/05/01/03:05
  • どっちもどっちだね。

    2023/07/15/18:30
  • 怖かったー!!

    2023/08/06/15:31

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