鳥籠から消えた鳥

つまり彼が栄養失調で倒れた後、なっちゃんは鳥籠の中から姿を消したらしかったです。

そしてもう一つ彼は不思議なことを言いました。

彼がお世話をしようと家を訪ねたら鳥籠の方から人がおしゃべりするような声が聞こえてきたらしいです。

やっぱり言葉をしゃべれるインコなのかと彼が覗いたら、鳥籠の話し声はぴたりと止み、静かになったそうなのです。

なっちゃんを飼い始めて、日に日にしんどくなっていた体の不調はなっちゃんが鳥籠の中から消えて以来、嘘みたいに無くなりました。

あの不思議な鳥が何の鳥だったのか未だに分かりません。

近づけば近づくほど生命を蝕む呪いの鳥だったのかもしれないです。

ただ、私と彼はなっちゃんをきっかけにして、お互いを知り、今は同棲をするまでになりました。

私は消えたなっちゃんが恋のキューピットになってくれたと信じたいです。

今なっちゃんがどこにいるのかは分からないし、自らの意思でいなくなったかどうかも分かりません。

ただどうか無事で今も元気で暮らしていることを願っています。

あんなに私たちに懐いていたなっちゃんがどのようなつもりで、突然鳥籠からいなくなったのか知りたいです。

これはさすがに妄想でしかないのですが、もしかしたら飼い主である私たちが日に日に体を壊していくのを見ていられなかったんじゃないかと私は思っています。