階段の踊り場に立つ幽霊

私には三歳違いの姉と妹がいます。
私たちが通っていた中学校には、よくある『学校の怪談』的なものがあって、『屋上に続く階段の踊り場に、血まみれの男子生徒の幽霊が立っている』という話を、姉に聞いていました。

姉が卒業し、入れ替わりに私が入学するわけですが、しばらくして『ああそういえば』と、問題の場所を見てみると、確かにどんよりとした空気が漂っていて、性別ははっきりしませんでしたが、同年代の少年らしい人影が立っており、体が赤っぽくも見えました。
ただの噂じゃなく本当だったのか、と思いました。
どういう理由で、いつからその霊があの場所にいるのかはわかりません。
他の生徒や先生は誰ひとり見えていないようですが、噂があるということは過去に見た人がいるのでしょう。
ただ、アニメの世界と違って屋上へ出るドアは閉鎖されているし、まずそこを通行することなどないわけで、移動教室の時はその階段の前を通ることもありましたが、見ないように素通りして、何事もなく三年間を過ごしたのです。

私が卒業した年に、今度は妹が入学します。しばらくして、
「居ただろ、どうだった？」と私が聞くと、

「うん、いるね、でも……」
妹はちょっと言葉を切ってこう続けました。
「アレは血まみれじゃなくて、赤いジャージを着てるんだよ、しかも女の子だね」
「え、そうだったんだ？」
私と妹はそろって『人には見えないものが見える』体質なのですが、妹の方が強力なのです。
「そこまでわからんかったな……」
「目が合いそうになったんで知らん顔して視線を逸らしといた、気づかれてないと思うけど」
そんなこんなで妹も完全無視を決め込んで、無事三年間を過ごしたのでした。

ちなみに姉は「そんなもん見えたことはないし、感じたこともない」と言っていました。