黒ビル、開かずの間
投稿者:笑い馬 (6)
『少年たちが黒ビル探検した日に起きた、男たちが女性に乱暴を働いた事件』
『少年たちが聞いた男3人と女1人が出していた奇妙な声』
その3つの事実を合わせて考えてみる。それがこの物語の真実になる。
あの日、少年たちが聞いた声。
それは男たちが愉(たの)しむ声。
そして絶望の中で魂を汚される女性の声。
開かずの間の中で女性が乱暴されていた声を、A君たちは扉の外で聞いてしまった。それが真実と思われる。当時、そういった性の知識に疎い少年たちにすれば、男女の行為中に発せられる声を、不気味な(幽霊や化け物の)声だと勘違いしても不思議ではない。
黒ビルの中で、B君が取った奇妙な行動。黒ビル3階に着いた時点で、B君には自分の兄貴の声が聞こえたのだろう。だから、自分の兄貴が何をしているのか気になり駆け出した。開かずの間を開けようとしたのも、扉が開いた後にB君だけ逃げ出さなかったのも。自分の兄貴が部屋の中で何をしていたのかを確かめるため。
そして扉が開き、B君は見たはずだ。
自分の兄貴とその悪友たちが、開かずの間の中で行っていた悪行を。
男たちが3人。それはB君の兄貴とギャングチームの悪友たち。
裸の女性が1人。それは事件の被害者。
その様子を見てしまったB君は何を思ったのだろう?
B君一家は後に引っ越した。B君の兄貴が警察に捕まり地元にいられなくなったか?また、この事件を警察に通報した少年とは誰か?
これは、A君の目線で語られた物語。だから、黒ビル探検後のB君が取った行動については分からない。
黒ビル、開かずの間。
この物語は、少年たちが不気味な声を聞き、怖い体験をした物語のはずだった。
だが、最も怖い思いをしていたのは、開かずの間の中にいて、乱暴されていた女性だ。
他人の心と体を踏みにじり、平気でいられるギャングチーム所属の3人の男たち。人間はどこまでも悪意に満ちた生き物だ。
その悪意の一端を、少年たちと被害者の女性はそれぞれ別の形で経験してしまった。その悪意が確かにこの世にあると知ってしまった。これはそんな物語だ。
※※※
追記:
それから、また時が流れ、事件の犯人たち、ギャングチームの3人がそれぞれの刑罰(刑期) を終えた頃のことです。
B君のお兄さんは意識不明の重体になりました。原因は高所からの転落による脳の損傷。ギャングたちの中で起こった「内輪もめ」が原因で、廃ビル内でリンチを受け、最後には高い所から突き落とされたとの情報です。B君のお兄さんはずっと入院しています。ギャングたちは暴行の罪でまた逮捕されました。
黒ビルには4階から1階にかけて、四角形の穴が開いています。あれは、エレベーターを通すための穴だったとか。
開かずの間から出ると、すぐ前にはその四角形の穴があります。誤って足を踏み外せば、4階から1階のフロアまで一気に落ちていきます。4階の高さというのは絶妙な高さですね。落ちても即死する可能性は低いです。せいぜい、体のどこかが大きく損傷するだけ。
B君のお兄さんがそうでした。
エレベーターシャフトじゃなくて通す穴だけ空いてることなんてありえんの?