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心霊

黒ビル、開かずの間
長編 2021/02/23 15:33 2,393view
これは私の古い友人だったA君が体験した物語だ。
A君の地元O県には『黒ビル』と呼ばれている廃墟がある。その名が示すように、外壁が真っ黒に塗られた不気味な廃ビルである。A君と仲間たちが少年時代、『黒ビル』を探検中に聞いた声。その不気味な声にまつわる物語をここに残す。

※※※

少年時代のA君は短パンにTシャツ姿がトレードマーク。外で遊ぶのが好きな、活発な小学3年生だった。
ある日、A君と仲間たち(仮にB君、C君、D君とする)は黒ビルを探検することになった。地元で色々と恐ろしい噂がある黒ビルを探検して、皆の人気者になろうという実に男の子らしい短絡的な考え。
「あの怖い場所に入ったなんてスゴイ!」「Aたちは度胸あるな」
小学校の級友たちに、そのような褒め言葉をもらうことを期待しての黒ビル探検計画である。

「よし、誰にも見つかってないな」とA君が言った。
「あたりはもう真っ暗だ。大丈夫、この暗さなら誰にも見つかりっこないって」と能天気にB君が答える。
少しばかり気弱なC君は心配そうにキョロキョロと辺りを見渡し、オカルト好きのD君は目の前にそびえる黒ビルを腕組みして見つめている。
黒ビルは無人である。黒ビルは管理する者がいない。今にも崩れ落ちそうなボロボロの建物(4 階立て、鉄筋コンクリート製)で、大人からは「危ないから入ってはいけない」ときつく注意されている。だから少年たちは夕食後にこっそり家を抜け出て、ここ黒ビルの前に集合した。
夜に見る黒ビルの外観はとてつもなく不気味だ。墨汁をたらしたような、どんよりとした色合いの黒色をしたビルの外壁。壁にはツタが張り付き、ヒビが入っている。
一階の窓ガラスは全て割れている。割れた窓を乗り越えて黒ビルの中へ侵入するのは危険に思えた。1階ビル正面の入口には白いシャッターが降りていて、ここからの侵入も難しい。
「あの落書きは何だろうね?」
「不良が落書きした。そんな感じだろ」と素っ気なくB君が答える。
シャッターには赤いスプレーで何やら妙なマーク(○印の中に家紋のような紋様が描かれたモノ)が落書きされているのが見えるのだ。
「入口はちゃんと兄貴に聞いておいた。付いてこいよ」とB君が先導してくれる。
1階からは黒ビル内に入れないそうで、外階段(非常階段)を登って、少年たちは2階の勝手口から黒ビルへと吸い込まれるように入っていく。

D君が家から持ってきた一本の懐中電灯、その明かりだけが唯一の頼り。
懐中電灯が放つ心細い一筋の明かりが黒ビル内の部屋を照らす。
何もない。
勝手口を入ってすぐの部屋には、これといって変わった物はなかった。
何か面白いもの(何か落とし物の類、黒ビルを使用していた者たちが置きっぱなしにした物など)があるかと期待していたが、何もないのだ。人がかつていた痕跡、生活感が皆無。
コンクリートがむき出しの床、壁も同じく飾り気のない打ちっぱなしのコンクリート。壁紙なんて気の効いたものは貼られていない。壁のわずかに崩れた部分から、さびた鉄筋が顔をのぞかせているばかりだ。
D君が懐中電灯を動かすと、明かりの中で白い粒子が舞う。ホコリが舞っているのだろう。物が何もない分だけ清潔そうに見えるが、実際はホコリや砂が床には積もっている。A君たちが少し動くたびに、もうもうとホコリが舞う。
「とりあえず、1階に下りてみるか」とB君が提案する。
「殺人事件が黒ビル内であった」「地下室に妖怪が住んでいる」「3階トイレの鏡に人でないモノが映る」といった具合に、いかにも子供ウケしそうな噂が多数、黒ビルにはある。
その中の一つ、黒ビルに存在すると噂される地下室、まずはそこに潜む妖怪とやらの噂を確かめようというのがB君の考えらしい。
勝手口のあった部屋から廊下へと出る。部屋と廊下の間には扉がない。廊下に出ても無機質なコンクリートの壁と床が見えるだけ。
「この黒ビルはね、ホテルとして使用する予定だったらしくてね。開業前に倒産したとか、共同経営者にダマサれて資金を持ち逃げされたオーナーが首を吊った。そんな噂があるよ、フフフ」とD君が楽しそうに笑う。D君は普段大人しい性格なのだが、オカルトがからむとテンションが高くなる奇人だ。
廊下を進むと、少し広い空間に出た。そこには3階へ登る階段と、1階へと下りる階段があった。いずれも螺旋階段になっている。階段を下りようと進むAたちの目の前におかしな四角形の穴があった。
そこだけ、コンクリートの床が四角形に切り取られている。落ちないように恐る恐る身を乗り出して
、四角形の穴をA君がのぞき込む。穴の先は真っ暗で何も見えない。D君が懐中電灯で穴の先を照らすと、1階の床が見えた。
「なんだこの穴。意味が分からない」
「上も見てみなよ」とD君が言うから、四角形の穴の真上、D君が懐中電灯を向ける先を見ると、2階の天井にも同じく四角形の穴があった。
四角形の穴を気にしながらも、少年たちは1階へと螺旋階段を下りる。1階のフロアの見た目は2階と同じ。コンクリートむき出しの壁と床、何もない殺風景な光景。少年たちは地下室を探す。 1階を隅々まで探す少年たちだが、地下へと下りる階段は見つからなかった。
「地下室見つからないよな」
「やっぱただの噂なんだよ」
「妖怪なんていかにも嘘くさいし」
少年たちは1階フロアの螺旋階段の前に戻ってお喋りをする。
A君、B君、D君が次は黒ビルのどこを探検するか会議する中、ずっと落ち着かない様子でソワソワしているC君。何度か天井を見上げては首を傾げている。
「C、なにか見えるのか?お化けでもいるのか?」とB君がからかうように言う。
「……いや。上の方から何か声が聞こえるような。さっきからずっと」
C君が声を潜めてそのように言うものだから、A君は少しだけ怖くなった。真面目で心優しい性格のC君が冗談を言うとは思えない。
見上げると四角形の穴。
その穴を通して、上階から何者かの声がC君の耳に聞こえているらしい。
耳をすましても、A君には何も聞こえなかった。
「黒ビルに声が聞こえる系の噂話、あったかな?」とD君は考え込んでいる。B君は「なにも聞こえねえけどな」と特に怖がりもせずにつぶやく。
「実は……この黒ビルに入った時から、女の人が誰かを呼んでいるような声が聞こえていて。最初は気のせいだ、怖いから幻聴が聞こえるのだと思っていた。みんなには聞こえてなかった様だからね」と、さらに怖くなるような事をC君が言う。
「へえ、じゃあその声の元を確かめてみようぜ!」
とB君が言うが早いか、懐中電灯を引っつかんで螺旋階段を駆け上って行った。
A君、C君、D君は慌ててB君の後を追う。たったひとつの懐中電灯を持って行かれたのだ。暗がりの廃墟に明かり無しで取り残されるのが少年たちには怖かった。声がする方へ近付いてしまう事よりも、真っ暗闇の方が怖かったのだ。だから皆、B君の背を夢中で追った。
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コメント(1)
  • エレベーターシャフトじゃなくて通す穴だけ空いてることなんてありえんの?

    2021/02/24/00:00