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ヒトコワ

ねこじろうさんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

近所のレトロな床屋
短編 2022/09/19 17:59 4,552view
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「さあ……」

全く見当が付かなかった。
マスターはタオルで僕の髪を拭きながら話を続けるんだ。

「スーパーマーケット。
それも若くてチャラチャラした男と楽しそうに手をつないで、買い物の最中だったんですわ。
しかもそのヤロウ、修行していた店の常連さんだったのよ。でね、面白いことに、そのヤロウ、なんとお客さんにソックリなんですわ」

「は?」

リクライニングを倒し、髭剃り用のクリームとカミソリを準備しだした。

「いや、ごめんなさいね。お客さんには何の関係もないんだけどね。でもね本当に似てるんですわ」

─いやいや、そんなことを言われても、こちらとしても困るんだけどなあ……

などと思っていると、蒸しタオルを顔に乗せられた。

「でね、偶然というのは重なるもので、その数日後にそのヤロウ、店に来たんだよね。
しかも間が悪いことに、私が担当になってしまってね」

白いマスクを付けるとタオルを外し、刷毛で僕の顔に髭剃り用のクリームを塗りはじめる。

「でね、そのヤロウ、なぜだかカットの間ずっとニコニコしてるんだよ。
何か良いことでもあったんですか?とそれとなく聞いたら、いやあ、来月結婚することになってねと嬉しそうに言いやがったね。
それでいよいよカーッとなっちまってね。
それで顔剃りしてる時、俺つい、やっちまったんだ」

と耳元で言うと、ジョリジョリと顎の下を剃り始めた。

「え?」

僕は天井を見ながら思わず、声を出した。

「切ってやったんだ……」

心臓が早鐘のように鳴り出す。


「切ったって、どこを?」

こわごわと尋ねてみた。

「嫌だなあ、お客さんも鈍感だねえ。
ここだよ、ここ!」

そう言うと指で僕ののど仏を押し、ツイーッと横に動かすんだ。

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コメント(1)
  • こっわ

    2022/09/19/20:48

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