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心霊

ネグホさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

開かずの間のある合宿所
長編 2022/07/06 21:33 5,767view
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大学2年の夏合宿での話です。
私は当時武道系の運動部に所属していました。
その年は、とある信州方面の山の中の宿舎を借りて合宿を行う事になりました。
そこは、宿泊料が1泊3千円前後と非常に安い上に、三食付き、道場も併設されていて貧乏な学生たちには申し分のない条件の宿だったのです。
合宿所は、古い民家を改築したような広い建物で、古さを残しながらも清潔で居心地がよい場所でした。
また回りは見渡す限りの田んぼ、雄大な南アルプスの山並みを臨むことができ、近くには川が流れ、大自然の空気たっぷりの素晴らしい環境で、バスを降りた私たちは大歓声をあげてしまったほどです。

朝は清々しい空気の中をランニング。
ご当地の野菜をたっぷり使った美味しい朝食後は、道場整備、昼食をはさんで夕方まで稽古。
掃除、夕飯、お風呂のあとはミーティング、という規則正しい生活です。
みんな若いだけあって、きつきつのスケジュールや厳しい稽古はものともせず、旅行気分で楽しんで過ごしていました。

2日くらいたった頃、ある男性の先輩が「ちょっと気分が悪い」と言って、稽古を休み、寝込んでしまいました。
昨日まですごい元気だったこともあり、どうしたんだろう?珍しいこともあるもんだね、とみんなで心配していました。

戻ってから、様子をうかがうと、先輩は布団に入ったまま1日中過ごしたようで、その上「夜寝られない。廊下を和服を着た日本髪の女性が何度も行ったり来たりしているのが見える」なんて真顔で言うのです。
みんな大笑い。
普段は元気いっぱいの先輩のキャラとあまりにかけはなれた言葉だったので、また適当に冗談いってるんでしょう?夢でもみたんじゃないの?と。

熱もないし、疲れが出たのだろうから今日は休ませようという事になりましたが、顔色が妙に青くて憔悴した表情だったのが気になりました。

次の日、今度は女性の先輩が「私も夜中に廊下を和服の女性がうつむいて歩いているのを見た」と言い出しました。
男性の先輩の話に影響されて、何かを見間違えたんじゃないか?と思いましたが、女性の先輩がかなりおびえていたので、みんなに恐怖が伝染して私もだんだん怖くなってきました。
とりあえず、夜中にトイレに行くときは、みんなで一緒に行くことに決めました。
一体この宿舎で何が起こっているのでしょう。

次の日は、合宿の中日で、夜に肝試しをやる事になりました。
場所は近くの墓地。
そういう事が大好きな私は、友達と2人でわくわく歩いていたのですが、大きな木の脇を通りかかった時、突然背中に“どしん”と何かが乗ったのです。
「あれ?」と思って振り返ろうとしたけど、しがみつかれているような感覚があって動けません。足が1歩も前に出ないのです。
恐怖心は不思議とありませんでした。
「何だろう?」と思いつつ、友人に「なんか歩けなくなっちゃった。背中に何かが乗ったみたい」と訴えました。

通っていた大学は仏教系だったのがラッキーでした。
友人は、すぐ実家がお寺の先輩を呼んできてくれました。
先輩は動けない私を見て「あ!」と言うなり、もう1人の後輩を呼び(この後輩もお寺の息子です)、何やらこそこそ言ってると思ったら、おもむろに、お経を大声で唱えだしました。
何のお経なのかはわかりませんが、さすがお坊さん達、2人して朗々と唱えてくれて、最後に「えい!えい!」みたいな言葉を発して、肩をポンポンっとされたら、背中の重みはすっと消えて動けるようになったのです。
なんとも不思議体験でした。

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コメント(2)
  • どこだろう、気になる

    2022/07/07/10:27
  • ストレートな体験談好き

    2022/07/08/18:17

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