エレベーターの声

俺はまた非常ボタンを押した

「おい！　まだか？　もう待ちきれないよ！」

少し間をおいて、返事がくる

「申し訳ありません。あと少しです」

さっきと同じ返事
俺はなんだか腹が立ってきた

「さっきもあと少しって言ったじゃないか！　あとどのくらいなんだよ！」

「申し訳ありません。あと少しです」

また同じ返事
我慢の限界だった

「いい加減にしろ！」

俺はキレて、エレベーターも壁を思い切り殴った

すると、

「もうおしまいです」

それまでの声とは違う、低くしゃがれた声だった

「え？」

俺は思わず後ずさってしまった

「もうおしまいです。もうおしまいです。もうおしまいです。もうおしまいです。もうおしまいです」

「おい！　変なイタズラはやめろ！」

俺は叫んだが、声は止まらない

むしろ、声はどんどん大きくなっていった

「もうおしまいです。もうおしまいです。もうおしまいです。もうおしまいです。もうおしまいです」

おかしい
あちこちから声が聞こえてくる

右から左から上から下から
ありとあらゆる場所から

俺は目をつぶり、耳を塞いだ

「もうやめてくれぇぇーー！！」

それから俺は気絶したらしい
目が覚めると俺は病院にいた