まやちゃん

私の8歳年下の妹には保育園からずっと仲がいいお友達、まやちゃんがいました。本当に仲がよくていつでもどこでも一緒でした。

そんなまやちゃんが白血病で亡くなったと聞いたときは、可哀そうでたまらなかったです。

妹もしばらくの間は落ち込んでしまって、友達と遊ぶこともせずに家に引きこもっている時期もありました。

そんな折、私は学校帰りに妹と誰かが一緒に公園で遊んでいるのを見たのです。

すごく安心して、やっと立ち直ったのかと母に話しました。

そしたら妹が帰ってきて、「今日誰と遊んでたの？」と聞いたら、妹は笑顔になりました。そして私に「マヤちゃん」と言ったのです。

母と一緒に顔を見合わせました。そして妹が心配になりました。

まやちゃんは亡くなっているので、会えるはずがありません。

それなのに妹が今日まやちゃんと何をして遊んだと話し始めたのです。

翌日もその翌日も妹はまやちゃんと遊んだ話をするのです。

やがて母は妹を病院に連れていくことも考え始めているようでした。

そんなある日、妹が学校からとぼとぼ帰ってきました。

またまやちゃんの話をされると身構えた私ですが、妹の後ろに付いてきている子供に目を留めました。

それは数日前に妹と公園で遊んでいた子に背格好がそっくりでした。

「友達？」と私が聞くと、妹は「うん、マヤちゃん」と言いました。

私はまやちゃんを知っているので、それが別の子だとすぐに分かりました。

だけど妹は頑なにまやちゃんだと言い張ります。「名前は？」と私がその子に聞くと、その子はにこっと無邪気に笑いました。

顔はぜんぜん別人なのに、その笑顔がなんとなくあのまやちゃんの笑い方を彷彿させるもので、私はちょっと驚きました。

妹はなんだかすごく元気がなくて、まるで最後の別れのようにその子と別れを惜しんでいるようでした。

「バイバイ」と手を振ってその友達と別れると、妹は私に言ったのです。

「遊べるのは今日で最後って言われた」と。そしてわんわん泣き出しました。

それから妹はまやちゃんと遊んだ話はしなくなりました。

あの日妹と一緒にいたあの子はいまだ誰だったのか分からないです。

ただ今では元気を取り戻した妹を見ると、もしかしたらあまりに嘆く妹を心配して、誰かの体を借りてまやちゃんが妹に会いにきていたのかも…と思ってしまいます。