鏡や窓ガラスに映る手

私が修学旅行に行った時の話です。

その日宿泊するホテルに着いた私たちは、部屋に荷物を置くと友達の部屋に遊びに行きました。

すると、友達と同室だった子が部屋に入った途端に泣き出し、体調を崩して保健医の部屋に行ったというのです。

それまで元気な様子だったのにどうしたのだろうかと疑問に思いながらも、数人の友達が部屋に集まりおしゃべりを始めます。

友達の一人が記念に写真を撮ろうと言い出しました。

みんなで部屋の色んなところで撮影しました。

その時、保健医が部屋に訪ねてきたのです。

要件は、体調を崩した友達が「手が手が」と言いながら泣き続けているが何か知らないか、ということでした。

私たちに思い当たることはありません。

保健医が帰った後も写真を取ったり、おしゃべりしたりして過ごしました。

後日、修学旅行から帰ってきて、撮った写真を友達同士で見せ合っていました。

楽しく話していた時に、一人の友達が写真を見て悲鳴を上げます。

どうしたのかとみんながその写真を覗き込むと、写真に映る私たちの背後にある鏡や窓ガラスに、無数の白い手形がついていたのです。

肉眼で見た時は手形は見えませんでした。

私たちはこの時ようやく、泣き出した友達の言っていた「手が手が」という意味がわかったのです。

その友達にだけ、肉眼でも手形が見えていたのでしょう。