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呪い・祟り

@zawazawa46さんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

アケさん
長編 2022/04/24 21:34 8,552view
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長い上に胸糞なので注意。
もう90歳を過ぎている祖母が9歳の時の話。

 祖母の実家がある某県k市(当時はk村)には、男子禁制の山がある。
その山の管理に携わるのは全て女性のみで、男性は関わってはいけない。
村の女の子達も祭りの時以外は近づくなと言われていたそうだが、特に男の子には厳しく言い聞かせていたらしい。
祖母が子供の頃は、年に一度成人男性(多分中年?)の形をした人形を山神様に奉納する祭りがあり、祖母も参加したことがあるそうだ。
神様に奉納する人形がお世辞にも可愛いとは言えないオッサンであることに疑問を感じた祖母は、両親に尋ねてみた。
曽祖父は何も言ってくれなかったが、曽祖母は「あの神様は男が嫌いだからね」と言ったきり、黙り込んだ。
食い下がろうとした祖母だったが、曽祖父の拳骨が飛んできたのでその日は諦めてしまった。

 次の日、祖母は特に仲の良かったA男・B子・C太・D介に山のことで何か知らないかと聞いてみたが、新しいことは分からなかった。
次の日も、その次の日も、祖母は大人から子供まであらゆる人に聞いてまわる。
なぜそんなに気になって居たのか今となっては分からないが、とにかくあの山のことを解明しないと気が済まない気持ちになっていたのだ。
狭い村でそんなことをしていれば噂はすぐに広まるもので、話をききつけた両親にこっぴどく叱られてしまった。
しかし、大人達が必死になって隠そうとしていた事で、それに気付いた子供達の何人かは、逆に好奇心をくすぐられてしまう。
そうしていつしか子供達の間では、あの山にはすごい財宝があるとか、幽霊がでるとか、子供を食べる化け物が住んでいるとか、ありとあらゆる噂話で持ちきりになった。
他の子がそんな話で盛り上がっていた時も、祖母は本当のことが気になって仕方なかった。

 そしてある日、A男とD介が興奮した様子で話してきた。
話によれば、ついに我慢が出来なくなった二人は昨日こっそり例の山に入ってみたそうだ。
山自体は特別険しいわけでもない普通のものなのだが、少し奥に入ったところに古いお寺?のようなものを見つけたのだという。
祖母「お寺?いつもお祭りで使う神社のことじゃなくて?」
D介「いや、神社よりもっと山の奥にあって、境内の裏から入るんだよ」
祖母は祭りに参加したことがあるため神社には行ったことがあったが、その時は必ず誰かしら大人と一緒だったし、境内で遊ばないように見張られていたので、そんな場所があることは知らなかった。
A男「境内の裏にさ、ちょっと広くなっているところがあって、その後ろの森に獣道みたいなのがあった。暗くなってきてたから昨日は途中で帰ったけど、あれ絶対すげー宝とか隠してんだよ。秘密基地にしようぜ。」
こうなってしまうと祖母はもう駄目だった。
好奇心を抑えることが出来なくなっていた。
すぐさまB子とC太に会いに行き先ほどの話をすると、二つ返事で賛成したので皆で行ってみることにした。

 翌日、家族にはいつも通り遊んでくるとだけ言って出てきた5人が集まった。
A男:当時12歳。一番年上で体も大きい。
B子:当時10歳。祖母の親友。
C太:B子の弟。当時7歳の泣き虫。
D介:当時10歳。好奇心旺盛。
そして祖母。
大人に見つかったらまずいという緊張感があったが、意外にもすんなりと神社に着いてしまったので、皆拍子抜けしていた。
B子「それで、獣道ってのはどこにあるの?嘘だったら承知しないからね」
A男「嘘じゃねーって。うるさいな。」
C太「絶対怒られるよ、もう帰ろうよ。」

祖母が怯えるC太の手を引きながら彼らに着いていくと、二人の言った通り近寄ってよく目を凝らさないと見えないような、細く狭い道らしきものがある。
祖母「本当だったんだ…」
D介「だから言っただろ、早く入ってみようや。」
B子「その寺?には大人がいるかもしれないんだから、静かにね。」
実は、祖母は獣道の入り口を見たときから嫌な感じがしていた。
しかし言い出しっぺである上に気になって仕方なかったのも事実なので、みんなには言えずに進むこととなった。
この時恥をかいてでもみんなを止めていれば良かった、笑い者になったほうが何倍もマシだった、とは後の祖母談である。
そうこうしているうちに獣道を抜け、開けた場所に出た。
そこには、ぼろぼろの日本家屋のような作りの建物が建っている。
山小屋にしては大きく、きちんと門まであるそれは確かに寺のようにも見えた。
だが、いろいろとおかしい。
そもそもなんで山奥に、こんな建物があるのか?
建物の周辺に草木が一本も生えていないのはなぜか?
なんとも言えない違和感があったがうまく言葉にならなかった。
とにかく気味が悪い。
A男「おい、入れるぞ。こっち来てみろよ。」
A男の声で我に帰った祖母は、いつのまにか皆が遠ざかっていたのに気付いて、慌てて門をくぐった。
敷地内に足を踏み入れた途端、ずっと気になっていた違和感の正体に気付いた。
音がしないのだ。
本来山というものは音で溢れている。
鳥の囀りや虫の声、川の流れる音や風の吹き抜ける音など実に様々である。
そんな音が、ここには一切ない。
完全に無音の山などあるのだろうかと怖くなったが、祖母の足はまるで吸い寄せられるかのように建物の奥へと進んでいった。
D介「うわ!なんだこれ!」
先頭にいたD介が、突然大声をあげた。
驚いてそちらを見ると、古くなっていた扉を開けたまま固まっているD介がいた。
B子「何?どうしたの?」
B子と祖母が慌てて駆け寄り、C太がひいっと小さく声をあげる。
そこには異様な部屋があった。
床板は腐って変色し、赤黒いシミの付いた壁には黄ばんだ着物が掛けられている。
そして中央部には、どす黒くなった布団らしきもの。
布団のちょうど真上に吊るされた太い縄。
D介「気持ち悪いな、なんの部屋だ?」
祖母「これ……産綱?誰かここで、赤ちゃんを、産んだ……?」
D介「こんな所で?なんで?」
B子は硬直していた。

祖母やB子は自分の母親のお産に付き添ったことがあるからか、すぐにそれが出産の為の部屋だと分かったのだ。
D介「な、なんだ、幽霊じゃねーじゃん!」
D介が強がって言った。
声は微かに震えている。
その時、
「ヴーーーーーーーーーーーーーーーーー」
獣の唸り声の様な音が聞こえ、皆一様にビクッと背中を跳ねさせる。
C太「何の音!?姉ちゃん!怖い!」
「ヴーーーーーーーーーーーーーーーーー」
どこから音がするのか分からない。
例えるなら、山全体が震えているような気がした。
暫く身を寄せ合っていたが、少しして音が止んだ。
呆然として動けない。
C太の悲鳴にも似た泣き声が聞こえた時、今まで黙っていたB子が口を開いた。
B子「そういえば、A男は?」
先程からA男の姿が見えない事に初めて気が付くと、弾かれたように駆け出し、A男を呼び探す。
A男は、そこに居た。
いや、A男だったものが。
祖母達が先ほどの部屋を見つけた建物の裏手に注連縄の張られた御堂の様なものがあり、その中で、A男は……死んでいた。
零れ落ちそうなほど見開いた目からは血の涙を流し、口からは赤い泡を吹いていた。
関節があらぬ方向に曲がっている。
一目で分かる。生きてはいない。
そんな、どうして、誰が。
恐怖で動けなくなっていた祖母の耳に、不意にあの音が聞こえてきた。
「ヴーーーーーーーーーーーーーーーーー」
……D介だった。
彼は直立したまま目を見開き、大粒の涙をボロボロと零しながら奇声をあげている。
その顔を見た時祖母を襲ってきたのは、恐怖よりも悲しみだった。
明らかに異常事態なのだがどうしてか、途轍もない悲しみが流れ込んでくる。
痛い、辛い、助けて、帰りたい…誰かの、そして何人かの声が聞こえた気がした。
「バチン!!!」
頬に感じた痛みで我に帰り、B子に叩かれたのだと分かった。
祖母はいつのまにか泣いていた。
そうだ、A男とD介が…早く誰か大人に知らせなければ。
そこからは恐怖で失禁していたC太の手を強引に引っ掴んで、B子と共に引きずるように走ったと思う。
とにかく必死で山を駆け降りた。
村にたどり着き、夕方になっても戻らない自分を探している大人達を見た時、祖母の意識は途切れた。

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