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ヒトコワ

みやびさんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

火遊び
短編 2022/04/18 04:57 3,641view

空気が乾燥してきた秋のこと。

燃やす紙も、灯油などの燃料もなく、ただ軽い気持ちで、枯れ葉や木々を燃やしていきます。

4人も居るし、燃やす資源は切れずに集まってきます。

火の燃やし方も、理科の授業で習い、知っています。

始めこそ、小さな焚き火でしたが、だんだん火が大きくなり、風も強くなり、わたくし達の手に負えない大火に変わっていきました。

足で踏んで消せるような火じゃないっ!

子ども心に、危機感を感じました。

原っぱには水場もなく、数日前に降った雨の、小さな水たまりしかありません。

逃げよう!と、誰かが言い出します。

すると兄は、自分の着ていた服の上着を脱ぎ、水たまりにつけると、火の上に被せました。

「こうやって、火を消すしかないだろう!」

火の端っこ辺りを、バンバンと叩きます。

わたくしも、ヒラヒラしたブラウスの上に着ていた上着を脱ぎ、兄を真似ます。

同級生にもやるよう呼びかけましたが、洋服を濡らしちゃいけないから、と断られました。

小さな水たまりの水は、2人分の洋服に吸い取られて無くなってしまいました。

「もうダメだ、逃げよう」

兄が言い、わたくし達は4人で、住宅街側ではなく、学校側に走って逃げました。

火が大きくなり、存在に気づいた周辺住民が騒ぎ始めていたからです。

「原っぱから火事だ、消防車を呼べ!」

自転車に乗って、人気のない道へ逃げたわたくし達は、捕まることなく、それぞれの自宅へと帰り着きました。

この原っぱ火事の犯人とバレることはありませんでした。

せいぜい、クリーニングに出さねばならない衣服を汚した事を、母に叱られた程度です。

その時は珍しく、兄が庇ってくれました。

数日後、原っぱの前を通ると、痛々しい焼け跡が広がっています。

兄の火遊びは、この経験を境に、指示されなくなりました。

他の事は、その後も変わらず命令されましたが、本人なりに反省したのかもしれません。

5年、10年後、兄は別の火遊び(大人の)に夢中となります。

そして妹は、火遊びに拒否反応を示すようになってしまいました。

この間にも、”火に対する恐怖” を植え付けられたからかもしれませんね。

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