怖がりの姉と鏡の中の自分。

え？ と驚いた。
もう怖い顔はやめてるのに。

もしかしてあの顔のまま固まっちゃったのかなと恐る恐る自分の顔に触る……やっぱりあんなに口角は上がってないし、目もそんなに大きく開いていない。

なのに鏡の中の私は、怖い顔のまま、私と同じ動きをする。
「なんで、」ぽつっと声が出た途端。

「えっえっえっえっえっえっ！！」

喉奥が引きつるような、気味の悪い高笑いがした……鏡の中の自分が、目を剥いて笑ってた。

思いっきり叫んで、泣いた。

ぎゃんぎゃん泣きわめく私の声に、自分の部屋にいた姉が飛んできて、喧嘩していたのも忘れてどうしたの？ と抱きしめてくれた。

鏡が鏡がと泣く私は、姉に意地悪しようとしたからおばけが出たんだと思い、ひたすらごめんなさいと謝った。
泣きながら謝るのを喧嘩の事だと思ったのか、姉は「別にいいよ」といって背中をぽんぽん叩いて宥めてくれた。

鏡はいつも通り、グズる私と宥める姉をそのまま写していた。

あれは見間違いだったのか白昼夢だったのか、それとも本当におばけだったのかはわからない。

ともかく、私はしばらく鏡が嫌いになったし、相変わらず怖い話を観る姉との仲は少しだけ良くなった。