すべり台はすべるものじゃない

私がまだ子どもの頃の話です。
当時の私は近所の児童公園がお気に入りで毎日遊びに行っていました。家から徒歩2分と近かったため親も油断しており、家事や仕事で手が離せない時は一人で遊びに行くのを許してくれました。

その日は珍しく他の子どもがいませんでした。
公園を貸し切りにできて上機嫌で走り回っている時、すべり台の上に見知らぬ男の子が立っているのが目に入りました。年の頃は同じ位です。

物怖じしない性格だった私は、知らない男の子と遊ぼうと小走りに駆け寄っていきました。

「ねー一緒にあそぼー！」
「いいよ。一緒にぶらぶらする？」
「するする！ブランコいこ」

「ちがうよ、すべり台でぶらぶらだよ」

男の子の言っている事がさっぱりわからず困惑しました。ぶらぶらするならブランコだろうに、彼はすべり台の上から動きません。
もっとよく観察した所、男の子が片手に持っている縄跳びの縄に気付きました。

「ぶらぶらってどうするの？」
「それはね」

男の子が意味深に微笑み……次の瞬間、すべり台の柵を抜けて飛び下りました。

「わあっ！？」

男の子の首には縄が絡まり、それが柵にひっかかってぶらぶら揺れています。
すっかり肝を潰して逃げ帰り、母を連れて公園に戻れば男の子は消えていました。