あてられるもんならあててみろ

コンビニでアルバイトしていた頃の出来事です。
当時深夜シフトに入っていた私はあくびをかみ殺し、退屈な時間をやり過ごしていました。店内の壁時計は夜1時を回っています。

するとピンポーンと音が鳴って自動ドアが開き、一人の男性が来店しました。

「いらっしゃいませー」

すっかり油断してたのもあり、腑抜けた声で挨拶しました。無防備だったのは認めます、そもそもこんな時間に来る客なんて滅多にいないのです。同じシフトの先輩はバックヤードで休んでいました。

しかし男は見るからに挙動不審でした。落ち着きない素振りで店中を見回したかと思いきや、迷いを吹っ切ってレジまでやってきて、私の後ろを見据えてきっぱり宣言したのです。

「今から俺がやることを全部見ていてください」
「え？」

次の瞬間、鼓膜が破けそうな声で男が絶叫しました。

「あてられるもんならあててみろォ！」

途端に男は暴れ出しました。商品を薙ぎ払い陳列棚を蹴倒し、太い奇声を発する男に度肝を抜かれた私のもとに、漫画を伏せた先輩が飛んできました。

「どうしたんだ！？」
「変な男が暴れてるんです、通報してください！」

数分後、パトカーが到着して男は警察に連行されていきました。
店を出る間際、ちらりと振り返って男は嗤いました。

「ほらよ、やっぱりいねえじゃねえか」

後日警察からかかってきた電話で知りました。男はある新興宗教にハマり身を持ち崩していたのです。

「どんなに貢いでも報われねえ、さっぱり願いは叶わねえし幸せになれねえ。だから侮辱してやったんだ。バチをあてられるもんならあててみなってな」