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心霊

雨女さんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

見えない人形
短編 2022/01/15 19:25 210view
私は小さい頃古くて小さいアパートに母と二人で暮らしていた。小3で母の結婚が決まり新築の一戸建てに引っ越して以降、当時の記憶は急速に薄れていった。
新しい父はお金持ちで私にたくさんのおもちゃを買ってくれた。その中には綺麗な洋服を纏ったお人形も含まれていたが、何故か私はこの人形に生理的嫌悪と恐怖を感じて、もらったそばからクローゼットの奥深く押し込めていた。両親にばれたらもちろん怒られるので内緒にしていた。

小5の時、以前住んでいたアパートの取り壊しが決まり懐かしさから足を運んだ。母も一緒だった。私と一緒にアパートの前に立った母がふと呟いた。

「あの頃は貧乏で苦労させたね。ろくにおもちゃも買ってあげられなくてごめんね」
「いいよ、今はたくさんもらえているから」

笑って切り返すと母が妙な事を言い出した。

「覚えてる?あんたがゴミ捨て場で拾ってきた見えない人形」
「え……」

何の話だかさっぱりわからないが、母の発言で次第に記憶が甦ってきた。幼稚園の頃、私はアパート前のゴミ捨て場に赤ちゃんの人形を見付けて持ち帰り、毎日熱心にお世話をした。

布団を敷いて寝かし付け、ミルクをあげ、オムツを替えるまねをし……しかしその人形の顔はぼんやりして思い出せない。
ところが母には娘が拾ってきた人形が見えず、想像上のお人形ごっこをしているのだろうと考えていたらしい。

「で、その子は?引っ越す時捨てちゃったの?」

私の質問に母は珍しく言い淀み、「ある夜ハイハイして出ていっちゃったそうよ」と答えた。
次の瞬間恐ろしい体験の仔細が鮮明によみがえった。私がゴミ捨て場で拾ってきた私にしか見えない人形は、とてもリアルな造りをしており、本物の赤ちゃんそっくりだったのだ。

もちろん本物の人形がひとりでに立って歩くはずない。しかも母には姿が見えていない。
どういうことなのだろうと思い悩む私の視線の先、ゴミ捨て場の青い袋の前に小さな人形がお座りしていた。違った。パッと見人形と間違えた小さな影の正体は、幽霊の赤ちゃんだった。

私は幽霊の赤ちゃんを安アパートの部屋に連れ帰って、そうと知らずお世話していたのである。
慌てて見直すと既に赤ちゃんは消えてしまっていた。
あの子が私のもとからいなくなってしまったのは、自分を捨てた本当のお母さんをさがしているからだろうか……。
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