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ヒトコワ

キミ・ナンヤネンさんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

子豚
短編 2021/01/07 23:04 5,321view
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隣の一軒家に、あるご夫婦が住んでいました。
旦那さんをBさん、奥さんをB子さんとします。

B夫妻には子供がいませんでした。その代わり、家豚と言うんでしょうか、子豚を2匹飼っています。
その豚たちは近所では有名で、夫婦で2匹をひもに繋いでよく散歩をしていたのです。
散歩の途中で、B夫妻は近所の方やその子供たちと立ち話をしていたり、時には持ち寄ってくるいろいろな肉や餌を頂いたりと、それが何より楽しそうでした。
ちなみに、ペットの豚には、肉類はカロリー過多で太りやすいそうです。

小太りのBさんは日曜大工が趣味で、休日には必ずといっていいほど庭で何かを作っています。
ただ、そこは閑静な住宅街のため、その音のせいでたびたび苦情を頂いていたようです。

おしゃべり好きのB子さんは、子豚ちゃんの散歩に出会った時には。私も他愛のない話をします。少し前になりますが、私とB子さんはこんな話をしていました。

「旦那(Bさん)がまた新しい道具を買ったのよ。せっかくだからって、使い方を教えてもらってもねえ…。」
「今度は何を買ったんですか?」

「チェーンソーよ。」
「それはまた本格的ですね。」
「もし、うるさくしたらごめんなさいね。」
という話したところでB子さんと別れました。

そんなある日の事、Bさんの家から夫婦喧嘩のような、怒鳴り声のようなものが聞こえてきました。
何を言っているのかははっきりとは聞き取れませんでしたが、どうやら日曜大工の騒音が原因のようです。
私は日中家にいないため、その騒音が私自身には迷惑だとまでは思っていませんでした。
Bさんの夫婦喧嘩も日常茶飯事だという事が後になってわかったくらいです。
「仲良く見える夫婦でも、わからないもんだな。」と思ったことを今でも覚えています。

それからしばらく、Bさん夫妻の姿を見ることがありませんでした。
どうやら、長期の旅行か何かに出かけているようです。

2週間ほど経った頃、子豚の散歩をしているB子さんとバッタリ再会しました。
「ああ、B子さんお久しぶりですね。」
「ええ、実は山小屋でしばらく生活してたのよ。お試し期間で貸してくれて、とても静かで周りには誰もいなかったのよ。」
「それってBさんの趣味で?」
「…ああそうね。山小屋ならどんな道具をいくら使っても、苦情も無くて良かったわ。」
「そういえば、あれほどあった大工道具が見当たりませんね。」
「全部山小屋へ持って行っちゃった。」
「じゃあBさんはその山小屋にいるんですか?」
「まあ、いるっていうか…。」
「Bさんを置いて、B子さんだけ戻ってきたんですか?」
「私には山小屋生活なんてできそうにないわ。」
「そうすると、Bさんって山小屋にお一人で?」
「…旦那はもうこっちには戻ってこないんじゃないかしら。」

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コメント(2)
  • ハスクバーナかな?

    2021/04/04/20:41
  • 「ハスクバーナ」と聞いて、チェーンソーとバイクを連想する人に分かれますね。

    2021/04/06/02:40

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