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不思議体験

ヒューマンさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

爪を立てて走る足音の正体
長編 2021/12/19 16:14 950view

これは私が高校生の時の話です。

私は部活動で陸上部に所属していました。私が所属している陸上部では、大会が近くなると毎朝朝練習がありました。
通学手段はもちろん電車です。家から高校は結構離れている為、朝部活に参加となると5時の始発電車に乗らないといけません。

当時の私はめんどくさがり屋でズボラだった為、夜お風呂に入ることは滅多になく、いつも朝早くに起きてから朝風呂に入り、準備をして家を出ていました。朝は得意だった為、特に辛くはありませんでした。

その日もいつも通り、4時過ぎに起きてお風呂に入りました。湯船に浸かる時間はない為、急いで全てを洗い終え、脱衣所で体を拭いて、服を着終わりました。早く部屋に戻って髪を乾かさないと!と、ドアに手をかけようとしたら、ドアの向こうから猫のような小動物がフローリングを爪を立てて走るような、カシャカシャカシャという音がしました。

私の家の脱衣所の扉の前は長い廊下になってます。ドアの窓はすりガラスになっていて、ドアの向こうはボケて見えます。ですが、ドア全部がすりガラスではなく、半分から上だけすりガラスです。

私は、なんの音だろうと思って思わずすりガラスの方を見ました。すると、ドアの前を白い影がスーッと通り過ぎるのが見えました。そこで私は固まってしまいました。今の時間は家族は誰も起きていないはずです。しかも、私の家では猫や犬などの小動物は飼っていません。仮に野良猫が侵入していたとしても、普通の猫などの背丈では、走っただけですりガラスに姿が映るわけでもありません。小学生の子ぐらいの背ならギリギリ映るくらいの高さですから。

足音は動物みたいに爪を立てて走った音なのに、映る背丈で考えると子供ぐらいの背。猫よりもっと大きな動物なのか?とも考えましたが、その音は猫が走るような軽やかな足音です。何が何だかわからなくなり、その場で立ち尽くしていました。

その間もその足音はずっと聞こえています。カシャカシャカシャと、廊下を端から端へ、何度も行ったり来たりしている様でした。ドアの前を何度も何度も通り過ぎる音がしたのですが、すりガラスにその物の姿が映ったのは最初の一度きりで、その後は一度も映りませんでした。

私は怖くても、何かが遠くまで行った先に走ってここから出よう!と思い立ち、ドアを開けようとしました。タイミングを見計ろうと、よく足音に耳を傾けました。すると、その何かわからない足音がドアの前でピタッと鳴り止みました。最悪です。もう私は怖くて怖くて、出ようにも出れません。私の動きを見透かしたかのようなタイミングでした。

私はもうどうすることもできず、その場で立ち尽くしていました。それからどのくらい時間が経ったのかわかりません。ドアの前に何がいるのかも、まだいるのかさえもわかりません。ドアを開けてしまって、そこにあるものを見てしまったらどんな恐ろしいことになるか。見ては行けないものを見てしまうのではないかと、ぐるぐる考えていました。

すると、ドアの前がいきなりパッと明るくなりました。廊下の電気がついたのです。え??って思っていると、私の名を呼ぶ声がしました。その声とともに人の足音がこちらに向かってきました。
すりガラスに人影が写り、ドアが開きます。ビクビクしながら見てみると、そこには母の姿が。

『何やってんの!もう5時過ぎてるよ!早く出ないと遅刻でしょ!』

という母の言葉で、私は安心したのか体の緊張が解け、涙が出てきました。母はそんな私を見てギョッとした顔をしていましたが、私は気にせず号泣していました。

しばらくして、落ち着いたところで、母に今あった出来事を全て話しました。母曰く、起きたらいつも私がいるのにどこにもいないし、呼んでも返事がないので、お風呂で寝てるんじゃないかと心配で見にきたらしいです。廊下を歩いてきたが、ドアの前にも、廊下にも動物やへんなものは何もいなかったそうです。

母は気のせいでしょ。と泣いてる私を笑っていました。私はスタスタと歩いて行ってしまう母を追いかけ、後ろにピッタリとついて自分の部屋に戻りました。とりあえず急いで支度をしました。支度しながらさっきのことを考えていると、ふと、あることに気づきました。

そういえばもしかしたらあの変なことがあった時間、お風呂に入ってた時間から逆算すると、朝の4時44分ごろだったのではないのか、と…。よく、4時44分には幽霊が出る。とか、その時間はあの世とこの世がくっつく時間だ。と聞いたことがあります。私は信じてはいませんでしたが、もしかしたらこの世のものではない何かがその時間にあの世から出てきてしまったのではないかと、今もなお、思っています。馬鹿馬鹿しいと人は笑うかもしれないですが。その日、結局私は遅刻して朝練習には間に合いませんでした。あんな怖い体験をして、私はあの日以来、朝にお風呂に入ることをやめました。入れるわけもありませんよね。今では夜にお風呂に入って、4時45分に目覚ましをかけて急いで準備して出ています笑

もう二度と朝にお風呂に入ることはないのかなと思います。今でもあの時のことは鮮明に覚えています。

あの時、ドアの前でいったい何が廊下を行ったり来たりしていたのか、何がドアの前で立ち止まったのか。いつドアの前から姿を消したのかは、いまだに謎です。
もしかしたら見えてないだけで、母が来た時もそれはいたのかもしれないですね。

その日の晩御飯の時、家族にもこの話をしましたが、父も前に朝お風呂に入ったときに、2階から子供が階段を降りてくる音がしたのだとか。私かと思い、「○○?どーしたの?」と声をかけたらしいが、返事は返って来なかったので、不思議に思い早めにお風呂を出て子供部屋に向かったが、私を含めみんなぐっすり寝ていたそうです。父はあまり深くは考えていなかったみたいですが、その話を聞いた私は、父が聞いたその足音の正体も、私とおんなじものの仕業だったのではないかな、と今も思っています。

それ以降不思議な出来事は起こっていません。家族からもそんな話は聞きません。もう二度と起きて欲しくないと、そう祈っています。

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