花が嫌いなあなたへ

　これは怖い話というより不思議な話です。

　私には弟がいます。
　
これといった前置きはなく、ある時急に弟はうなされ始めました。

　その頃の弟は確かまだ小学生にもなっておらず、

　毎日うなされていたわけでもなかったようなので、酷い悪夢でも見ているのではという程度の認識でした。

　ただ何度かうなされ続けたせいか徐々になににうなされているのかハッキリしてきたみたいで、下から腕が出てくる、ぼくを掴んでくる、と不思議な発言をしながら親に泣きついていた彼の姿を今でも覚えています。

　最初は弟には悪いですが親に構ってほしいがための嘘か思っていました。

　ですがさすがにここまでくると弟が可哀想になってきた私は、公園で咲いていた花を下校中に摘んで持ち帰り、コップに入れて寝室に飾るようになりました。

　怖い目にあっているならせめて周りは可愛くしてやろうという発想だったと思います。

　ただそれからなぜか弟はうなされなくなりました。

　一体なにが原因だったのかよくわかりません。

　それでも弟の寝つきはよくなり寝室も怖がらないようになって、良かったねとホッと家族で安心したのも束の間、私が飾った花が枯れたあたりからまたうなされ始めたのです。

　なんとも不思議な現象ですが、ひとまずまた公園から花を摘んで寝室に飾ります。

　そうすると下から腕は出てこなくなったと笑顔で弟は話してくれました。

　本当に何が原因でなぜ花を飾ると腕が消えるのか今でもわかりません。

　それから弟が小学生になる頃には花がなくともその腕は現れることがなく、うなされることすらなくなり今は普通に暮らしています。