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不思議体験

友無さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

祖父と行った夏祭りで出会った少女
短編 2021/08/29 08:15 1,271view

僕が小学生だった頃、田舎の祖父母の家に帰省し祖父と夏祭りに行った時の話です。
僕は祖父に連れられて神社で行われている夏祭りに行きました。初めての夏祭りでそこには屋台が建ち並び、綿菓子やお好み焼きの良い匂いを漂わせていました。僕は気分が上がって走り回っているといつの間にか祖父とはぐれていました。不安になり「おじいちゃん!どこ?」と叫んでも、人混みの雑踏の中では返事はありません。
泣きそうになっていた時、誰かが僕の手をぎゅっと掴みました。ひやりとした、冷たい手でした。振り向くと、長い髪の毛の僕と同い年くらいの女の子が立っていました。

「迷子なの?ここは危ないよ、こっちに来て」

囁くように女の子は言って、僕の手を引っ張って行きました。細く小さくて夏なのにとても冷たい手でした。
人混みから離れた場所に移動し、僕は彼女にお礼を言うと女の子は白い顔に笑顔を浮かべています。赤い地味な浴衣が印象的でした。

「あたし、サトコ。あなたお名前は?」

自己紹介すると、サトコちゃんはどこか嬉しそうな表情を浮かべ、

「せっかくだから、お祭り見て回ろうよ」

おじいちゃんのことが気になりましたが、友達ができた喜びで、一緒に祭りを楽しもうと思ってしまいました。屋台を回り、気づけば祭りの終わりを告げる花火が上がる時間が近づいていました。
僕はサトコちゃんに花火を見に行こうと誘いましたが彼女は少しだけ悲しそうな顔をしながら白い顔を僕に向けて言いました。

「花火を見たら、帰るの?」
「うん。おじいちゃんが心配してるからね。」
「そっか、帰っちゃうんだ。またあたし、一人になっちゃう・・・」

寂しげな表情でサトコちゃんは僕を見つめ、ぎゅっと手を握りました。

「ねえ、あたしと一緒に来てくれる?あたし、まだ一緒に遊びたい」

ひんやりとした手が、強く強く僕の手を握りました。ちょっと怖いと思ったその時。遠くの方から祖父の声が聞こえました。「おじいちゃん!こっちだよ!」と大きく手を振って、サトコちゃんの方を振り返ると、そこには誰もいませんでした。

祖父にサトコちゃんという友達ができたと話、どんな女の子だったか特徴を話すと、祖父は顔を蒼くして言葉を失いました。

「おじいちゃん、サトコちゃんのこと知ってるの?」
「その子はきっと何年か前に神社でいなくなった子だ」

数年前、神社のお祭り中に女の子が行方不明になり町総出で探しましたが、結局今も見つかっていないそうです。きっと寂しくて同じくらいの年の子どもと遊びたかったのかもしれません。

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