向かい合わせの怪異
投稿者:r.s (1)
最後まで読み終えた時、何かが背後を横切る気配がした。
咄嗟に振り返ったが何事もない。
こんなことで怯えている自分が情けなかっよ。
ただ、化物が何を指しているのか気になってね。
いずれにしても、すぐに警察へ届け出なければいけない。
この書置きは懐へしまった。
私は罪深い人間だよ。
警察がこの書置きを読めば、恐らく現場を視察に来るだろう。
あんな労働環境だ。下手をすれば建設を中断することにもなりかねない。
そうなれば、従業員の給与すら払えなくなる可能性もでてくる。
それだけは避けなければいけない。
結局、この時は私も社長と同じように利益を優先した訳だ。
私は警察へ探索願を依頼して、事情聴取が終わると現場へ戻った。
きっと見つかることはあるまいと感じながら。
現場の人間にはサトウが失踪した事実だけを伝えて、その他に見たことは伏せておいた。
私が説明を終えて皆に持ち場へ戻るよう伝えると、一人の作業員が声をかけてきたんだ。
彼は他に気になることはなかったかと尋ねてくる。
なんでも、彼は失踪したサトウとは仲が良く、昨夜に部屋を訪ねたところ、中からけたたましい物音と怒声が聞こえてきたので怖くなって引き返したそうだ。
私は彼を管理室へ連れて行き、詳しい話を伺うことにした。
彼の話によると、サトウは毎日のように「この土地はまずい」と言って何かに怯えているような素振りを見せていたのだとか。
ある時は虚空を見つめてぼうっとしていたり、唐突に背後を振り返ったり、日に日に不可解な挙動が増えていったらしい。
そうした言動を見せるようになったのは、ある出来事がきっかけだという。
着工から1ヵ月が過ぎた頃、彼がいつものように資材を運んでいると、「ちょっと来てくれ」とサトウに呼ばれた。
彼が駆け寄ると、サトウは泥まみれの衣装箱を抱えている。
重機で地面をならしていたところ、地中に埋められていたそれが姿を現したので掘り起こしたそうだ。
こびりついた泥を拭うと、漆塗りの側面に頑丈そうな鍵が備えられていた。
彼は埋蔵金か何かが入っていたら良いんだがと冗談をとばしていたのだが、どうしても中身が気になってくる。
サトウは「別に金目の物が入っていてもくすねる気はない。ただ、見つけてしまったのだから興味も沸くというものだ」と言った。
こんな人里離れた山間に埋められている理由が分からなかったが、それ故に気になって仕方がない。
二人は何が入っていても上長には報告しようと決めると、サトウの持っていた特殊な器具で鍵を壊し始めた。
鍵は劣化していたこともあり、存外あっけなく外れたのだ。
今日いちばんよかった
映像化してほしい
引き込まれました。
引き込まれました
よかった。怪異の実態は直接そこに現れる事も無く、けど情景はしっかり目に浮かんで怖かった。
地味に怖い
その婆さん何者だよ
強すぎじゃね?
やっぱり怪異はこのくらいの書き方の方が映えるね
超常現象かどうか微妙なラインでとどめておくのがベスト
老婆がどんな呪いをかけたのかを明確には言わないのも良かった
そこで神主が人形を使ったどうたらこうたらの呪いですと説明してたら正直萎えてた
この作品を正当に判断できる評価者がいることを切に願う。今まで数々の怪談を目にしてきたが、この作品はクオリティが違う。文学作品としての気品すら感じる。
これ読むと他の話が幼稚に見える
箱に入った人形と鏡が、「後遺症ラジオ」の〃おぐしさま〃で再生されてゾッとした
この話は有り得ない
あの時代だったらこの婆さんは呪いをかける前に居なくなっているはずだから
言い方変だけど、よく出来てるなぁと思った
だからタイトルの「向かい合わせの怪異」というのにも意味があると思うんだけど、考えてもわからない。何が向かい合わせなのかわかる人いる?
もう小説家デビューしていいクオリティ。
引き込まれた。
読み応えありました。
過去似たような怪談を目にしましたが、クオリティの高さではトップクラスですね。
難をいえば、タイトルで損をしていると思います。
私の想像力が不足していることもありますが、どなたかも指摘していたとおり、「向かい合せの怪異」とした理由と根拠がいまいちわかりにくい点でしょうか。
本文を読み進むうちに、なんというタイトルだったかすら忘れてしまうほど優れたストーリ展開なので、単純にもったいないなぁと思った次第です。
サトウと友人の幻覚怖っ
あもすっごぃ。
今まで見た中で1番文章力が高い。プロの小説家かと思いました。