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kwaidanさんによる都市伝説にまつわる怖い話の投稿です

カビの生えないパン
短編 2024/06/09 19:06 759view

この町にはずっと前から、不思議な噂が渦巻いていた。Yパン工場の、カビひとつ生えたことのないパンについてだ。

作り手の正体をご存知だろうか。それは別世界からの”使者”なのだ。

かつて、この町で奇妙な事件があった。Yパン店の店主・伊勢崎東一郎が、美味しいパンを作りすぎてしまい、自らの命を絶ってしまったのだ。

その死に際、東一郎は口走った。「私のパンは永遠に傷つくことがありませんように。そして、私の願いを継ぐ者が現れますように……」

翌日から、Y工場で奇跡が起きた。パンにカビが生えなくなったのだ。おまけに、店主がいなくなっても無人で製造が続いた。

従業員たちは驚愕した。店主の遺体は見つからず、彼の魂がパン製造を永遠に続けているらしかった。

町の人々は次第に気づいた。Yパンから不気味な力を感じるようになった。食べた人の中には、不老と永遠の命を授かる者もいた。

しかし、その代償は重い。肉体が石化し、動けなくなってしまうのだ。町には次第に石像のように凍りついた人々が増えていった。

ある日、通り魔の青年・茂木純平が、その不老の力を知ってしまう。彼は妄想に取り憑かれ、永遠の命を得るため、Y工場に忍び込んだ。

工場の中は怪しい白い煙に包まれていた。それはYパンの生地から立ち上る霧であり、亡き店主の魂の姿だった。

純平は血眼になって、その霧に向かって叫んだ。「店主さま! この永遠の命をください!そして、この町をわが手に!」

すると、霧は恐るべき声で答えた。「望みどおりの永遠を与えよう、純平よ。しかし、お前の命はそのときに終わる」

純平は喜び勇んだ。しかし、パンの霧に包み込まれたその瞬間、彼の体は石化し始めた。彼は気づいた。店主は永遠の命を与えると約束したが、それは純平の魂の永遠を意味していたのだ。彼の肉体は石になり、町の人々もそうなるのだと。

そして今、私もこの噂を聞いて、Yパンを口にする恐怖に怯えている。この「永遠のパン」を食べれば、私たちもまた石像と化すのだろうか?

人知れぬ力に魂を売り渡した代償は、永遠の呪いと化したのだ。そう、私たちは誰かのために美味しいパンを作り続ける宿命を背負わされたのかもしれない。

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コメント(1)
  • 昔、Yパン工場の機械に人が巻き込まれたという話を思い出した。

    2024/06/10/10:40

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