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ヒトコワ

サヤマさんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

どうしたにょ?
短編 2023/10/19 14:58 2,230view
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 僕が小学校高学年の時の体験談ですが、いまだにしっかり記憶している出来事です。
当時学校の陸上クラブに所属していた僕は、朝練のため毎日早朝に登校していました。
ある朝、同じクラブの仲の良い友達と二人で登校していたときのことです。通学路の途中にある古い鉄橋を渡っているとき、橋の向こう側から風変わりな格好をした人が歩いてくるのが見えました。

 その恰好は、当時ゲームで大人気だったストリートファイターⅡに出てくる「ベガ」というキャラクターを彷彿とさせる軍服姿のような出で立ちで黒っぽいマントをまとっており、丸眼鏡に口ひげを生やした40代ぐらいの中年男性でした。まるで軍隊の行進みたいな一風変わった歩き方をしており、その風貌のわりに足元は下駄みたいな履物を履いていて、子供ながらにもあべこべな組み合わせだなぁと思い、友達と一緒に目くばせしてクスクスと笑ってしまったのでした。すると、その男性はすれ違いざまに僕たちの前でピタッと立ち止まり、左右のポケットに手を入れた前かがみの状態からこちらに異様なほど顔を近づけて「どうしたにょ!?」と大声で聞いて きたのです。

 文章にすると怖くないというか、むしろおかしく感じられるかもしれませんが、その中年男性はギョロギョロとした目をこれでもかというぐらいにカッと見開いて、困惑する僕たちに二度三度「どうしたにょ??」とだけ、繰り返し尋ねてきます。決して聞き間違いではありませんでした。「どうしたの?」ではなく「どうしたにょ?」という妙な言い回しでした。その目は異常に血走っており、おそらくこの人はまともな状態ではないんだなというのがすぐにわかりました。友達は突然近くに詰め寄ってこられた恐怖感とその異様ともいえる言葉づかいに「あ、、、あぁ、、、」と固まってしまい、僕自身も不安でえずきそうになるほど気持ち悪くなったのですが、そんな中「何か答えなければ、この人から危険な目に合わせられる」ことを直感し、当時その橋の横側で取付工事中だった立看板の支柱(2本あった)をとっさに指差して「あの柱、今までなかったのに今日見たら突然出来ていたのでビックリした」みたいなこと(確かそんな内容でした)を言って、僕らが笑ったのはそのことですよというような旨を伝えました。
 もちろんその場しのぎの言い逃れだった訳ですが、なんとなくその中年男性は、僕らがクスクス笑ったのが自分のことではないかと勘ぐっているような気がしたのです。今思えば、道ばたの柱を見て笑うなど普通ありえないですし、話の流れとしても不自然なのですが、そのときは自分なりに本当に必死で返答を考えたのでした。その中年男性は僕の話を聞くと、柱の方をしばらくジーッと見つめたあと急にトーンを落として、「そう、、、」とだけ言い残し、またあの変わった歩き方で僕らの前から立ち去っていきました。

 一緒にいた友達はこのことで具合を悪くしてしまい、翌日からクラブにも来なくなりました。僕もまたあの中年男性に会ったらどうしようかと怖くなり、親に相談して陸上クラブを辞め、他の大勢の子供たちと同じ時間帯の通学に戻ることになりました。しばらくすると朝の陸上クラブそのものが活動停止になったのですが、あとで知ったところでは、うちの親が学校にその話をし、先生たちも事態を重く受け止めた結果だったそうです。

 それから何年もたってから、テレビか何かで映画「帝都大戦」のテロップ(ベガみたいな恰好をした加藤という主人公)が映ったときに、当時の不安がよみがえったのか、突然オエッというえづきと一緒に動悸が激しくなったことがありました。現在ではそんなことはありませんが、おそらく当時は自分でも気づかないうちに僕の心によっぽど影を落としていた出来事だったのだと思います。今から約30年ほど前に起きた、とある田舎町での話です。事件性はなかったとはいえ、もしもあのとき何も答えられずにいたらどうなっていたのだろう、、、とか、手をしまっていたポケットの中には何か凶器のようなものが入っていたのではないか、、、などと色々考えてしまうこともあり、当事者としては何とも言えぬ恐怖を感じた体験でした。
 最後までお読みいただきありがとうございました。

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コメント(2)
  • オチがない。

    2023/10/27/14:47
  • ホカホカご飯にょ

    2023/10/29/01:47

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