胎内の記憶

花村「え？何の話？」

葉山「いやいやいやいや、数日前に赤ん坊の頃の話言ってたじゃないの」

花村「えー、私そんなこと話した覚えないよ？」

葉山「母親の胎内で聞こえた声とか暗かったとか、生まれた瞬間のこととか話してくれたじゃないの」

花村「何を言ってるの？」

葉山「花村さんどうしたの？」

花村「葉山さんどうかしてるよ」

葉山（まさか・・・話したことを忘れてる？）

花村「・・・私は確かに不思議な体験とか恐怖体験はそれなりにしてきたけど、まさか赤ん坊の頃の記憶を覚えてるような奇妙な体験なんてしたことはないよ」

花村「葉山さん、他の誰かから聞いた話とごっちゃになってるんじゃないかな？」

葉山「・・・そうかなぁ・・・」

数日前に聞いた話は話したことになっていなかった。
何故、話したことを忘れてしまったのだろう、それどころか体験した内容まで忘れてしまっているが、たった数日で忘れてしまうものだろうか？

葉山さんは腑に落ちなかった。
間違いなく花村さん本人から聞いた話だったからだ。
それに、花村さんは２０代という若さだからよほどのことがなければ記憶力に問題は起きないはずだ。

いくら知り合いが多いと言えど、霊感が強い人の不思議な体験なんてそうそう聞けるものではない。
間違いなく花村さんから聞いた話ではあるが、本人はすっかり話したことを忘れてしまっているし、語った内容も体験したことないと言い張っている。

葉山「花村さんて霊感強いんだけどね、こういう感じで時折急に思い出して語ってくれたり急に忘れたりするんだよね」

私「それって、花村さんにからかわれているわけではないんですよね？」

葉山「それは何とも言えないけれど、霊感が強くて色々な体験をしたことは語ってくれるし、ずっと覚えていることと忘れることもあるような感じではあるかな」

私「内容によって、というわけですか」

葉山「そうらしいね」

私「もしかしたら、何かの力が作用して急に思い出して語っては急に忘れたりするのかもしれないですね」

私「神様、或いは守護霊様からのメッセージの可能性・・・それを葉山さんに聞かせなければならなかった理由があったのかもしれませんね」