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不思議体験

withさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

雪の中で見かけたヤバい奴
長編 2023/04/08 17:25 7,762view
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水路と言っても深さ一メートル程度で水嵩も三十センチに満たない、チョロチョロと流れている水路。
それでもバシャッと足から浸かれば瞬く間に靴や靴下に染み込み、跳ねた水で膝下辺りまで急激に冷却されて体の芯が震えた。
おまけに軽く手をついたから袖口もビショビショだった。
幸い足を挫くでもなく、ちょっと服の下で擦りむいた程度だったが、水路の対岸も雪の壁が出来上がってて、水路の深さ一メートル程度に積雪数メートルが合わさり、絶壁に見える。

これ登れるか?と考えているうちに何処からか『ボスッ、ボスッ』と雪を掻きわけるような音が聞こえた。

ソレが近くまで来ているのかと思った俺は、なるべく音を立てないように『ザブッ…ザブッ…』とひとまず水路を進み、その場から距離をとる。

水路はずっと直線というわけではなく、緩やかに曲がったり、直角に曲がったりとうねっていたのがかえってソレの追跡を凌ぐ助けになった。
俺が落ちた場所はもう見えなくなったから、水路を追ってこない限り見つかる事はないだろう。

それよりもどこから這い上がろうかと悩んでると、遊歩道と交わるように水路が地下に続くところがあって、その辺りはある程度除雪されているから足場もあって登りやすそうだった。
そこから遊歩道に上がる際に頭だけ出して念の為に周囲を確認してみたが白い和装をした不審者はどこにも見当たらなかった。
公園内には雪で遊んでいる子供たちや親子連れがいたので、人里に降りたように俺は安堵しながら地上に立った。

するとタイミングよく友達が「おーい、何してんだよ」と手を振りながらやってきた。
友達はびしょ濡れの俺の姿を見て「この雪の中で寒中水泳か?w」と笑ったが、俺は「ちげーって、めっちゃヤバい奴いたんだって」とここまでのエピソードを話してやった。

でも友達は「何処にいるんだよ?」と、本当なら案内しろよと言わんばかりの態度で俺に詰め寄ってくる。
案内したい気持ちはやまやまだが、今の俺は凍死しそうなほどに震えていたのもあって、「と、とりあえず一旦家にかえ、帰る」と歯をガチガチさせながら友達と俺の家に向かう事になった。

だが、公園を出ようとした時、遠く離れた林側に積まれた雪の壁から覗くように、鬼の面をつけたソレが公園内を見渡しているのを見てしまった。

すかさず「ちょ…壁になって」と俺は心許ないならがも友達を盾にして身を縮めるが、友達は「?」とちょっと困惑してた。
俺は「ちょっと早足で行こう」と無理やり友達の袖を引っ張り、公園を足早に出て行った。
公園を出る際、ちらりとソレが居たあたりを確認したが既に姿は無いようだった。
ソレが俺の背格好をしっかり見ていたのかは分からないし、もしかしたらあの鬼の面のせいで視界が悪く、俺の背格好や服装なんかを鮮明に見ていない可能性もある。
だからなのか、その日以降、ソレと邂逅する事は無かった。

ちなみに、その日着ていた服は二度と着ていない。
あの不審者が服を覚えているとも考えられるので、一応着ないように注意した。
奴が林の中で何をズタズタにしていたのかは分からないが、人死にや失踪者が出たなんて噂やニュースを地元で聞かないので、たぶんだけど小動物でも殺害して楽しんでる異常者だったのではないかと俺は考えている。

当時の俺は怖くてその時の体験を友達にも家族にも話していないが、今振り返れば家族にくらいは打ち明けていたほうがよかったのかもしれない。

3/3
コメント(3)
  • 生きててよかったですね
    もし自分が作者の立場だったらと考えるとぞっとする…

    2023/04/10/18:19
  • その得体のしれない物は、なんだったのでしょう?

    2023/05/04/04:32
  • なまはげ?

    2023/11/02/13:44

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