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不思議体験

すももさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

ジュンちゃんちでのお泊り
長編 2023/04/02 21:47 11,643view
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何か細工があるのかと思い始めた頃、ジュンちゃんが「二階から見てみよう」と言い出しました。
ジュンちゃんの部屋の窓から玄関先を見下ろすことができるのは私も知っていたので、一緒に二階に移動します。
ただし、私たちが二階に上がる事を知られるのが嫌だったので、階段や二階の照明はつけずに暗闇の中を壁伝いに上がりました。

ジュンちゃんの部屋に入ると、泥棒になった気分で何となく姿勢を低くして窓辺に歩み寄り、カーテンの動きでバレないように僅かな隙間からこっそりと外を覗き込みます。

屋根が若干目隠しにはなっているものの、玄関先の足場は丸見えなので誰かがドアの前に立っていれば分かるはずです。
しかし、私たちが見る限りでは玄関前には誰も立っていませんし、家の前の通りにも誰もいません。

それなのに『ドン、ドン』と僅かに二階にも音が聞こえてきました。

「誰もいないよ、ねえ、どうやって叩いてんの?」

ジュンちゃんは叫びたい気持ちを押し殺すように私にしがみついてきました。
私も同じ気持ちで震えていましたが、ふと妙な視線に見つめられている、そんな感覚が電流のように迸り鳥肌が立ったのです。

チラリと外を覗くも玄関先には相変わらず誰もいない。
じゃあ、この嫌な視線はどこからなのだろう。
そう思っているとある事に気づきました。

ジュンちゃんの部屋には珍しい天窓がついています。

普段は遮光レールのようなもので日差しを防いでいますが、ジュンちゃんは基本的には遮光レールを使わずに裸の状態にしています。

唐突にその天窓が気になった私はおもむろに顔を上げました。

やはり、視線の正体は天窓からでした。
そこには弱弱しい月明かりが逆光となって、うっすらと人が覗くようなシルエットが浮かんでいました。
しかし、それを『人』と認識する事はありませんでした。
よく夜行性の動物が暗がりに入ると目が光りますが、まさしくそのシルエットも薄緑色に似た眼光を放っていたのです。

それも四つも光っていました。

私があんぐりと口を開いたままそれを見ていると、玄関の方から『ドン!ドン!ドン!』と強く叩かれる音が鳴りました。

驚いて「ヒイィィ」と二人で抱き合っていると、今度は頭上から『バン!バン!バン!バン!』と両手で窓を叩く音が部屋中に響き、ジュンちゃんの「きゃああああああ!」と言う悲鳴が私の耳を通り抜けました。

頭上の音はあの天窓にいるシルエットが発狂したように天窓を叩いているせいでした。

玄関を叩く音、天窓を叩く音、ジュンちゃんの悲鳴、この三つが合わさった事で私の頭の中は不協和音でクラクラしましたが、そんな喧騒の最中に『アケロオオオオオオ』という低くくぐもった男の人の声が聞こえたのです。

思わず天窓を見てみれば、あのシルエットが頭や両手で天窓を叩きながら『アケロ!アケロオオオ!』と叫んでいるのが分かりました。

私は口を堅く結んで気合を入れると、ジュンちゃんを引っ張り起して部屋を出ていきました。
と言っても、逃げ場なんてどこにもないので未だ大音量でニュース原稿を読み上げるアナウンサーの声が聞こえるリビングに戻っただけです。
が、何を思ったのか家電の受話器を取って母の携帯電話に掛けました。

すぐには出なかったので次に父の方に掛けると、二十秒くらいで父が出てくれました。

3/4
コメント(3)
  • これはトラウマですね…
    大人が居ないのを知ってやってきた何者かなのでしょうか

    2023/04/02/23:50
  • じゅん!?

    2023/04/09/14:22
  • 怖いですね。不思議な事ってあるんですね。

    2023/04/24/14:28

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