カーテンの向こう

知り合いのS子さんに聞いた話です。
S子さんには今年三歳になる男のお子さんがいます。

その子が最近、かくれんぼにハマっていて、S子さんが席を外したり、目を離した隙に、
どこかへ隠れてしまうのです。

子供なので、テーブルの下とか、ソファの陰とか、ドアの後ろとか簡単に見つかるところばかりです。S子さんも、
「どこに隠れたのかなー」
と、すぐ見つけずに、二、三回別の場所を探すふりをして遊んであげていたそうです。

ある日、トイレから戻ってくると、また男の子がいません。

またか、と思いつつ見回すと、部屋から庭へつづくサッシのカーテンが、
こんもりと盛り上がっています。

S子さんは苦笑しつつ、いつものように探すふりをしていると、くすくす、と笑い声がしてきました。それはテーブルの下から聞こえてきます。
え？　と思ってみると「見つかったあ」と男の子が出てきました。

じゃあ、あのカーテンの向こうにいるのは？

S子さんは、ちょっとここを動かないようにね、と男の子を別室に移し、モップを片手に、用心深く近づきました。
その膨らみはまだあり、笑いを堪えているように小刻みに震えています。

サッと引き開けると、そこには何もいませんでした。
しかし、何かの獣のようなにおいが漂っていて、しばらく残り香があったそうです。