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不思議体験

希侑さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

夢の続き
短編 2023/02/15 15:40 725view
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編集者の仕事をしている水木さんは、企画の重なった多忙な時期を乗り越えた直後にインフルエンザにかかってしまった。

「いい年して女の一人暮らしなんて、その時初めて後悔したわ。熱は40度近くまで上がって、薬飲むのも一苦労。もうずっと寝ることしかできなかったのよ」

しかし彼女が後悔したのは、何も熱のせいだけではない。熱に浮かされていた彼女はその睡眠中に幾度となく夢を見たのだが、そのどれもが悪夢だったのだという。

「でも覚えてる夢はこの1つだけで、ただ今でもそれが現実なのかわかんないんだけど・・・」

ひどい夢だった。

暗い廃墟のような家の中で、薄汚れた服を着た髪の長い女が幾度となく自らの腕を搔きむしっていた。それも手ではなく剃刀で。何度も刃を通過した皮膚はただれ、「うわぁぁぁ~」と糸が細く引くような声をあげながら、腕の肉が見えていてもその女は剃刀を動かす手を止めない。

そしてふと顔を正面に向けた女は、水木さんに気付き手を止めゆっくりと彼女のもとに歩き出した。そしてそこで目が覚めた。

「最悪な寝起きだったし、もう寝汗もぐっちょり。とりあえず水分を取ろうと思って布団を出ようとしたら、夢で聞いたような『うわぁぁ~』って声が聞こえた気がしたの」

その声はどうやら外から聞こえたらしく、なんとなく彼女は玄関に向かいドアを開けた。

白い服を着た髪の長い女が立っていた。顔は髪で隠れて見えない。せわしなく動く右腕を見ると、血で真っ赤に染まっている。その女は縫い針で自らの腕を縫っていたのだ。針が皮膚を通過するとき、女は「うわぁぁ~」というか細い声を発していた。

「すぐにドアを閉めて逃げればよかったんだけど、なんだか動けなくて」

その間も、女は一針二針と自らの腕を縫っている。そして突然、水木さんを見据えるように顔を上げ、言った。

「なんでお前がここにいるんだ!」

「視線が合った瞬間、急に金縛りが解けたように動けるようになって叫んだの。でもそこからは覚えてなくて、気づいたら布団の上だったのよね」

水木さんはすべて夢かと思ったのだが、その後恐る恐る玄関を開けてみると、ドアの前には乾いた血痕が残っていたのだという。

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