発信アリ

その後もこの電話は「ボタンは無効→何度か押す→突然Ｓさん宛てに発信」という行動を何度も繰り返し、遂には、ボタンに触れてもいないのにＳさん宛てに発信、という最初と同じような行動をするようになってしまった。
もう手の施しようがない、と判断した上司は急いでド○モ・ショップにこの電話を持って行った。
上司はそこで色々と今回の状況を説明したのだが、ド○モ・ショップ側が出した結論は「原因不明の故障。修理不可能のため新品と交換」という事務的なものだった。

私「結局、新品に交換になったんですね。アドレス帳のデータは移してもらったんですか？」
上司「ああ、やってもらったよ」
私「それでＳさんのデータは入っていたんですか？消したって言ってましたけど本当は残ってたんじゃありませんか？」
上司「いや、入っていなかったよ・・・」

それきり、上司はこの話題を口にしなくなってしまった。

どうして、あの携帯電話はＳさん宛てに狂ったように発信を続けたのか？
そして、上司はなぜ沈黙してしまったのか？
私には思い当たるフシがある。
実は、上司は「ゴルフの約束がある」という理由でＳさんの通夜や葬儀には行かなかったのだ。
また、お宅にお邪魔して仏前で手を合わせる、ということも一切しなかったらしい。
きっと、あの発信は「あんなに仲良くしていたのに冷たいじゃないか。一度くらいはお参りに来いよ」というＳさんからのメッセージで、上司もそのことに気付いたのでバツが悪くなったのだろう。