犬の祟り

30年以上前の話です。
当時、私の街には変人として有名なおじさんが住んでいました。
そのおじさんの特徴は背が小さくダルマ体形で、子供の間では「どんぐりおじさん」と呼ばれていました。
なぜ、このおじさんが変人なのか…それは犬を主食として食べているというウワサがあったからです。

ウワサの発端はおじさんの家に小屋があるのですが、その小屋には数十頭の犬が繋がれていました。
しかし、数日後には明らかに犬の数が減るというのです。
私たちは小学生だったのですが、単純に疑問がありました。それは、犬をどこから連れてくるのかでした。
昔の話ですが、野犬が出るような地域でもなく本当に謎でした。

しかし、その謎も数日後に解決しました。
それは、小学校の帰りの会の時に先生が「○○市（隣町）で飼い犬の誘拐が増えているそうです。犬を誘拐する人は人間も誘拐する可能性があります。十分に気をつけて家に帰ってください」という話があったからです。

あくまでも推測ですが、どんぐりおじさんは隣町から犬をさらって来て食べていたのです。
私たち、小学生の間で、そんなうわさが流れました。

そんなある日、僕たちは川遊びをしていました。
すると橋の上にはどんぐりおじさんが犬を数匹連れて散歩している様子でした。
私たちは「どんぐりおじさんまた犬さらってきたのかなー」と話をしていると、突然おじさんは「犬、いぬ、イヌー」と奇声を上げながら橋から落ちました。
橋の高さはそんなになかったのですが、頭から落ちたせいで即死だったそうです。
どんぐりおじさんが橋から落ちて地面に衝突する一部始終を見てしまった友達は「どんぐりおじさん、きっと犬を捕まえようとして落ちたんだよ」というのです。
私たちは「何でそう思うの？」と聞き返すと友達は「地面に衝突する時、何もいない所を捕まえようとしてたもん」と話してくれました。

その後、どんぐりおじさんが実際に犬を食べていた証拠が発見されました。自宅の庭やゴミ袋から犬の頭部や骨が見つかって、変人どんぐりおじさんは都市伝説の様な怖いおじさんだったという話になりました。私たちの後輩の中で今でも話題になるそうです。
ちなみに、現在ではどんぐりおじさんは犬の祟りで死んだというウワサになっていて、どんぐりおじさんが死んだ橋ではどんぐりおじさんの霊が現れるといわれてます。