作業所の黒い影

これははるか昔、私が夏に合宿免許を取りに行った時のことだ。

正直言ってご飯がまずい場所の合宿だったため、コンビニにご飯を買いに行くようになった。

学科の授業や実技の教習が終わる夜に買いに行くのだが、山奥の辺鄙な場所に宿舎があるため、コンビニまでの道のりに街灯などなかったのである。

私はスマホのライトをつけて注意しながら進んでいたのだが、途中で何かの作業所らしい、ボロい建物を見つけた。

合宿に来て以降いつも通っている道なので特に気にすることもなく歩いていたのだが、ライトが作業所の窓に当たると何か見えた。

最初何が見えたか理解できなかった。

普段は窓から見えなかったはずの黒い、大きなものが窓から見えた。

なんだろうと思いよく見ると人影らしい。それも窓より背が高い。

見間違えかと思ったが明らかに背中まで長く伸びる髪の毛が見えたのである。

それを理解した次の瞬間、私は速攻で情けない悲鳴をあげて逃げ出した。

コンビニのあたりまで来た時に後ろを振り返ったが誰もおらず安心した。

コンビニで買い物を済ませて帰ろうとしたとき、道の反対側に何か見えた。

大きな黒い影。

店員に言っても信じてくれるわけはなく、私はダッシュでそこを駆け抜けた。

作業所のところまで来た時、作業所の方にライトを当てないようにしていたが夏なのに関わらず物凄い悪寒がして全身に鳥肌が立った。

それ以降も合宿は続いたわけだが何かおかしいことはなく、作業所の窓に二度と黒い影が映ることはなかった。