とあるホテルの13号棟

「妙なこと？」

「うん。昨日の夜、いつものようにベッドに潜って簡単に寝入ったんだけど、夜中何となく胸が苦しくなって目が覚めたんだよ」

「ふーん。で？」

長い付き合いだが、彼からそんな話を聞くのは初めてだ。

「ここ10年ぐらい、夜中に起きたことなんてまずなかったんだよね」

「そりゃそうだろ、お前に限ってそんなことはありえん、よく分かる。」

僕は少し茶化しながら大きく頷いた。

「部屋の入口の電気が着いたままだったから、まだ夜中ってことはわかったんだ。それでまぁ珍しく夜中に目が覚めたし水でも飲みに行こうと思って水飲みに行ったんさ。それで立ち上がろうとしたらなんと立ち上がれないんだよ」

「どういうこと？」

「俺が聞きたいよ！多分”金縛り”ってやつなのかとそんとき考えてたんさ。そしたら布団のない隣のベッドのマットレスが凹んでった訳。」

「凹んでいくって？」

「言葉の通りよ。そっから凹みが大きくなって人型になって行ったんさ。」

僕はSの話に聞き入っていた。Sは続けて

「その人型が、俺の方に近づいて来るんだよ。
そしてマットレスの端に来てだんだん凹みが無くなっていて、全部無くなった瞬間僕の胸の上あたりが急に重くなったんだよ。すごく嫌な息苦しさだったよ」

「すると透明人間みたいなのがSの上に乗っかって来たってこと？」

「そういう事なんだろうね。俺もよーわからんからなぁ」