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心霊

斑さんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

不動産屋の時のお話~小さな福の神~
短編 2021/01/26 19:29 1,805view

 私は以前不動産屋で働いており、他の業務と併せて営業も担当しておりました。田舎で都内からもアクセスが整っていた為、リゾート物件や田舎暮らしの物件をメインに取り扱っていました。そんなある日のお話です。

 私はお客様を物件にご案内する予定がありました。その方は何度か別の物件をご案内させて頂いており、その日はお母様も一緒に見たいとの事。お客様自身は私より一回り上の女性で、スタッフにもとても優しく誰にでも気配りを忘れないような方でした。

 ご来店頂きいつものように社用車で物件に向かいます。海の近くが良いなとの事でしたがどうしても予算を重視するとなかなか希望通りの物件は少なく、新規で預かった山中の仲介物件を見てみたいとの事した。

 その物件は売主様のご実家で、自身は近くの別の家に住んでおり建物も経年劣化が進行している為手離してしまいたいとのご希望。田舎にしてはこぢんまりとした平屋で、普通ならば通りかからないような立地にありました。そんなたたずまいが原因でしょう、不法投棄にも悩まされており、問題がいっぱいです。
 しかし不動産的には立地条件の関係から建物が残っている方が需要があるので、とりあえず建物付きで売れてしまえばいいなというところ。お客様のご希望にはちょっと適わないかなと個人的に判断していました。

 田舎の不動産売買で個人が売主の場合、「現況渡し」と言って家具やその他の日用品、つまり売主がいらないと判断したものはそのままの状態で売買される事が多かったのですがこちらもその状態。購入者が決まれば撤去するとは聞いていましたが仏壇や遺影もそのままでした。

 現地に着くとお客様のイメージとは違ったご様子。その後別の物件をご案内する予定だったので庭先で次へ行こうとお話していました。するとお客様はなんだか雰囲気が独特で気になるとの事。中を見れますか?と聞かれたのでもちろんですと意外に思いながらも玄関に向かいました。

 この物件、鍵がついていないのでそのまま玄関を開ける事ができるのですが、いつも思うところがありました。訪問時に売主様に不在を確認しても、誰かがいるような気配がすごく濃いのです。家は明るく見通しも良いのですが、「誰かがいる」という強い感覚に襲われるのです。

 ですが別に怖いという感じは一切なく、本当に人がいる感覚がするだけなので特に問題ないのですが、出入りがたやすく売主様や他の人がいると気まずいので私はいつも玄関先から大きな声で「失礼します!」と声をかけて入っていました。

 玄関の戸に手をかけたその時、縁側の前の庭にいたお客様が「あ、いいです。売主様がいらっしゃるんですね、大丈夫です」と大きく声をかけてきました。一瞬私のいつもの感覚に対する緊張に気づかれたかと思い驚きましたが、どうやら様子が違います。お客様は私に話かけながら恐縮した様子で、室内に向かってペコペコと会釈したり「大丈夫です」と遠慮している事をジェスチャーしていました。

 「どうしましたか?売主様いないので大丈夫ですよ」と声をかけると、「え?あの方は違うのですか?あ、ではお母様が…」と言いかけたところで黙る私を見てお客様のお母様がすかさず「すみません、この子変なんです」と。その言葉にハッとしたお客様は慌てて「ごめんなさい、何でもないです」と言い直しました。

 私は普段の違和感の事があり、事情を話してもしよければ教えて欲しいと詳細を聞きました。お客様は別に怖がらせたかったわけではなく、座敷にご高齢の女性が座っていてこちらに気づき会釈をしてくれた、そしてお茶の用意をしてくれようとしたので断ったと教えてくれました。

 違和感に気づきながら告知しないとトラブルの元になるので私はあいまいにごまかして、「まぁそれなら折角ですし」と中をご案内する事にしました。玄関を開けると、やはり誰かがいるという確実な気配。そしてお客様は自分にしか見えないとわかった上で、そこに先ほどに女性が今お茶を淹れてくれたと教えてくれました。奥に進み、仏壇の前に来ると「あ、この人です」と売主様のお母様の遺影を指しました。

 その後も優し気な笑みをたたえるその人について、飾られていた手作りのインテリアもこの方が作ったそうですよ、ここはこうみたいですよと家人にしか知り得ないような情報を教えて頂き、仏壇にご挨拶をして次の物件へ向かいました。

 移動の車中で他の人に見えないものが見えてその区別がつかない時があること、人には自分から話さないようにしていることをそっと教えてくれて、最後にあの物件にいた方のおかげでそこを買う方は子宝に恵まれますよ、というプチ情報も頂きました。

 結局そのお客様はこの物件はご購入されず、他の物件にご縁があったのですがそれはまたいつかのお話。後日売主様にさりげなく確認すると、母の趣味や作品についてなぜ知っているのか?と驚きながら答えてくれました。

 気配の正体がわかった安堵と、お客様が最後に言った「でも、(私)さんも見えてましたよね」の言葉が今も忘れられません。

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コメント(3)
  • 霊感強い人は同じ強い人が分かるというし。
    なんかいい話だったね。

    2021/01/26/20:22
  • いい話?

    2021/01/26/20:39
  • うんうん ええ話しやったねぇ
    子宝に恵まれるとか座敷おばあちゃんやね
    優しい霊もおるんだよね
    俺も文才あったら娘の話しでも載せてみたいな

    2021/01/29/07:27

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