奇々怪々 お知らせ

不思議体験

クスクスさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

なぜか住みたくない部屋
短編 2022/03/28 18:51 950view

これはかなり前になりますが、私が高校を卒業し、地元から離れた専門学校へ通うことになった頃の話です。

同じ専門学校へ行くことが決まっていた友人とルームシェアすることになり、二人で部屋を探そうと、ある不動産会社へ行きました。その会社の方はとても親切で、条件に合った物件を数件ピックアップすると、内見の時も丁寧に案内してくれました。

4件ほど内見し終わった日の夜。友人とどこにするか話し合ったのですが、その内1件だけ、二人とも一切触れない物件があったのです。その物件は内装もきれいでしたし、二人で住むには十分すぎるほどの広さで、立地も悪くなく、家賃も予算内で何の問題も無かったのですが、なぜか二人とも、そこの話をするのを避けていました。

それに気づいた私は、思い切って友人に聞いたのです。「そういえば、あの部屋は?全然話してないよね?」と。

すると友人は微妙な表情になり、「あー…。あそこはないかな」と答えました。理由を聞くと、「よくわからないけど、なんだかあまり住みたくない」。私は不思議な感覚になりました。なぜなら全く同じ感想を私も抱いていたからです。

条件から言ってもその部屋は最終候補として残って当然のはずが、どうしても住みたいと思えないのです。それを友人に伝えると、友人も少し驚いた様子で私の言葉に賛同してきました。

不思議に思いながらも私たちは、その物件以外から住む部屋を決めることに。

専門学校へ通い始めて数か月後、私は新しく学校でできたその街が地元の友人に、ふと思いついてこの話をしてみました。

詳しい場所を聞いた途端、彼女の顔色がさっと変わったのをよく覚えています。

「そこにしなくて良かったよ、ほんと」

詳しく聞くと、例の物件があるあたりには昔大きな病院があって、戦時中は野戦病院として機能していたそうなのです。空襲などで大怪我を負った人たちがたくさん集められ、亡くなった人も相当いたらしい、と。

「今でもあの辺りは、出るとか見たとかよく聞くから」

彼女の話を聞いて背筋が寒くなると同時に、私は納得しました。私も一緒に住む友人も、特に霊感があるわけではありません。それでも感じた、「ここには住みたくない」という感覚。それはよほどのことだったのでしょう。

怖がりの友人にはこの話は教えませんでした。しかし十数年経った今でも、会えばたまに「あの部屋って何だったんだろうね」と話題にのぼります。

それほど友人にとっても奇妙な体験だったのでしょう。

次にその話題が出た時は、教えてあげようかと思っています。

1/1
コメント(0)

※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。

怖い話の人気キーワード

奇々怪々に投稿された怖い話の中から、特定のキーワードにまつわる怖い話をご覧いただけます。

気になるキーワードを探してお気に入りの怖い話を見つけてみてください。