口を大きくぽっかりと開けて窓から覗く顔

私が大学生の時の話です。

その日もいつものようにとある講義室にて授業を受けていました。

受講人数は全体で100人ほどだったでしょうか。その大学にしてはかなり広めの講義室でその授業は行われました。私は友人と共に後ろの方の席に座ってノートをとっていました。

授業自体はあまりおもしろいとは言えないものでだんだんと集中力が切れてきたころ、ふとある窓に目がいきました。その窓は講義室の前の方にあり、縦横の幅がそれぞれ1メートルもないほどの小さな窓でした。

その窓から誰かがこちらを除いているのです。

肩から上しか見えませんでしたが、長い黒髪だったので女性かと思います。

その女性が目を見開き、口を大きくぽっかりと開けて、講義室の中をを除いていました。

その表情が恐ろしくてすぐ目をそらしてしまい、少ししてからもう一度その窓に目をやった時には、もうその女性はいませんでした。

授業が終わってから隣に座っていた友人に一連の出来事について話しましたが、友人は気づいていないようでした。

その講義室は3階にありその窓の外には人が立てるような足場はないのに、彼女はどうやってそこから覗くことができたのでしょうか。

そして後から思えば、私がいた席からその窓までかなり距離があったのに、表情がはっきりと認識できたのも不思議です。

目と口を大きく開いて…怒っているような、いや何の感情もないような、なんとも言えない表情でした。

私がその女性を見たのはそれっきりです。