手形をつけてた男の子

私が20代のころに働いていた美容室でのお話になります。

そのお店はガラス張りの可愛らしいお店で、あるご夫婦が経営していました。

私が毎日遅くまで技術の練習をしながら働いてた下積みのころ、やっと仕事やお客さんにも少し慣れてきたころでした。

季節は夏になりいつものようにオープン前に出勤しガラスや鏡を拭いて準備をしていました。

何日かして気づいたことがありました。お店の正面ガラスにいつも手形がついてることに。最初は何も考えずに一生懸命拭いてたんですが一日に何回もその手形がついてることに気づいたのです。

しかもお店のガラスの内側の低い位置に小さな手形が何度もついてました。

小さな子供なんて何日も来店は無かったので不気味に思いはじめたころお店の上のマンションに住んでいる常連さんのおばさんがご来店し話してると、お孫さんの話をされました。

するとお孫さんが何年か前に車で跳ねられて亡くなられたみたいでした。

なぜこの話を私にして下さったかと言うと丁度お盆前だったからです。帰ってくる、そう言うことなのでしょうか。

私は思わずガラスに何度も手形がつくお話をしました。良くガラスに貼り付いて笑顔で覗いてみたり、うちのオーナーに飴をねだったり可愛らしい男の子だったらしいです。

当時の背丈も聞くと私の想像どうりでした。おばさんは手形を見せてほしいと何度も言われたのですがもう拭いてしまったあとでそれ以降手形がつかなくなったのです。

その夜シャッターを閉めオーナーと店を出ようとした時鏡に小さな男の子が一瞬鏡に映りました。はっきり見えたのです。
オレンジ色のトレーナーにベージュのズボンの男の子でした。不思議と話を聞いていたせいか怖くはなかったです。

私はあとで思ったのですがおばあちゃんに自分の存在を知らしたかったのではと思いました。でも手形に気づいたり男の子か見えたのはなぜ私だったのかはわかりません。

不思議な体験でした。