エレベーターの中にいた人

　エレベーターに乗っておられた〇〇さんが、尿路感染症で入院していて、実はその晩、施設におられなかったことを知ったのは、夜勤明けの朝のことです。
　二階の夜勤者に、〇〇さん大丈夫だった、エレベーターに乗っていたよね、と話してみたら「何言ってんの。入院中だからいないよ」と呆れられたのです。

　どういうことだろう。エレベーターの中にいたのは確かに〇〇さんだったのに。
　もしかしたら、ごまかされているのではないかと思い、パソコンの記録を調べてみました。間違いなく、〇〇さんは入院中となっていました。
　同じ施設の中でも、一階と二階では、なかなか利用者さんの状態を把握しにくいのです。本当はくまなく記録をチェックしておかねばならないのですが、わたしはいつも、それが苦手なのです。　

　それにしても、です。

　わたしは不思議でなりませんでした。
　なるほど、確かに〇〇さんは入院中だ。では、エレベーターに乗っていた〇〇さんは一体、何者だったのだろう。
　他の方と見間違えたのかと思いましたが、〇〇さんは特徴的な方です。間違えることはないと思います。

　その〇〇さんですが、入院中に他の疾患も見つかったということです。当分、施設には戻らないようです。というより、状態があまり良くないので「もう戻らないかもしれない」と言われ始めているようです。

　あの夜勤の時、エレベーターに乗っていた〇〇さんは、一体、何だったのでしょうか。
　理解できない出来事です。