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くまさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

人が亡くなる時に鳴る電話
短編 2021/12/05 22:53 929view

 わたしは特別養護老人ホームの介護士をしております。

 施設あるあるなのですが、夜間帯に色々と、奇妙な現象が起きることがあります。

 全員眠っておられるはずなのに、ちりんちりんと鈴の音が聞こえるとか、誰かが歩く足音が聞こえるとかは、日常茶飯事のことです。

 今回は、施設にある電話のことについてお話します。

 わたしの勤める施設には公衆電話があります。利用者さん向けというより、来客の方向けのものです。

 実はこの電話は、たまに夜間帯に鳴ります。

 間違い電話なのではと職員たちは言うのですが、試しに電話に出てみたら、ごわごわと音が遠くで聞こえるだけで、誰もなにも喋りません。

 実はわたしは、この電話が、もしかしたら夜間帯に人が亡くなる時の前触れとして鳴るのではないかと感じていました。一度、電話が鳴った時、取ったことがあったのですが、ごわごわ変な音がする向こう側で、誰かが人の名前を呟いているような気がしたのです。それで、もしかしたらと思っていました。

 「この間、また電話が鳴ってさ」と、職員が言っているのを聞いて、いつの夜勤でどんなことがあった日だろうかとそれとなく調べてみたら、それがみんな、夜間帯に誰かが亡くなる日の宵の口なのです。

 やっぱり、人が亡くなる前触れの電話なのかな、と、オカルトめいたことを考えつつ、ある晩、夜勤に入りました。

 夜の2時くらいだったでしょうか。ジリジリと電話が鳴りました。

 しいんと静かな中でうるさいので、受話器を取りました。その時はすぐに切りました。

 今、自分のユニットでは危篤状態の人はいないはずなので、多分大丈夫だろうけれど、電話が鳴ったということは油断できない、一秒たりとも寝ておられる利用者さん達から目を離してはならないと思ったのです。

 さて、朝が来ました。何事もなく、みんな無事でお元気であることを確認し、「なあんだ、思い過ごしだった」とほっとしたのもつかの間、いきなり外で救急車の音が鳴り響きました。ちょうど早番が来る時刻でした。おはようございます、と出勤してきた早番に、「今救急車きてるよね」と確認すると、「そうそう。二階のユニットの某さんが、呼吸してないみたいだって、さっき気づいたらしいよ。ほんとは他のユニットの夜勤者にも伝えたかったらしいけれど、そんな余裕がなくて、慌てて救急車呼んだみたいだけど」と、言われました。

 救急車はしばらく滞在しましたが、やがてまた音を鳴らしながら病院に去ってゆきました。

 搬送された利用者さんは亡くなったそうです。

 やはり、あの電話が鳴る晩は、用心しなくてはならないのだなと思った次第です。

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