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不思議体験

ろーどくだもんさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

山ちゃん
短編 2022/08/25 10:47 1,545view

嫁の実家からの帰り道での出来事なんですよ。

その日は、久しぶりに嫁の顔を見て義父母も大喜びでした。それで、向こうで夕飯をご馳走になったんで、帰りが遅くなったんですよ。
広々とした、気持のいい道でね。田舎だから、ちょっと夜が更けると、もう他の車もいなくて。
春先で陽気も良かったし。窓も開けて、夜のドライブですよ。
そうしたら、後ろからタクシーが、すごい勢いで走ってきたんです。あいつら夜は飛ばすから。

僕は霊感がするどい方でね。いわゆる
「見える人」
なんです。で、後ろから、すごい嫌な雰囲気がするんですよ。
バックミラーの中で、どんどんタクシーが大きくなる。中がわかるぐらいまで近づいて来る。

助手席に骸骨が座ってるんですよ。

「やばい」
と思いました。とにかく、圧が半端ないんですよ。人外の存在感っていうんですか?
まぁ、人外じゃなくてもやばいんですけど。人骨?骨格模型?そんなもん助手席に座らせてるタクシーなんて碌なもんじゃないですよ。
それで、助手席の嫁に
「後ろから、ヤバイのが来てる。絶対見るんじゃないぞ」

って言ったんです。
嫁は、うなずいてました。実は、彼女も見える系の人なんで、ピンときたんでしょう。二人して怖い目に何度もあってきてるし。
交差点で信号が赤に変わったので、とまる。後ろからタクシー。車線を変えて、左に並んで止まった。
僕は、真正面を凝視ですよ。絶対左だけは見ないぞって。
でも、嫁、好奇心が勝っちゃたんだと思う。左を見ちゃったんだと思う。嫁が思わずって感じで、叫んだんですよ。
「えっ、山ちゃん?なんで?」
って。
「えらいこっちゃ。運転手、嫁の知り合いか?」
と思ったんで、僕も、つられてタクシー見ちゃったんですよ。
もちろん、骸骨も見えました。でも、それよりも運転手です。山ちゃんなんですよ。

山崎 邦正。

いや。そんなとこに居るわけないし、運転手の帽子もかぶってた。よく考えれば、他人の空似なんですよ。
でも、その時は本物だと思ったし、今も思ってます。嫁が叫ぶぐらいですし、僕も、パッと見た瞬間に思いましたもん。
「山崎 邦正や」
って。

「落語はどうした?」
って。
山ちゃん、頑なに前を見てる。微動だにしない。嫁の声も聞こえたはずなんだけど。
その場の全員が、山ちゃんをガン見です。そうなんですよ、骸骨も見てるんですよ。
僕は、それを見て。
「あっ、やっぱり人外だ。」
って思ったんですけどね。人骨や模型の首が動くはずないんで。
それで、骸骨が山ちゃん見てるってことは、僕達のことも見えてるはずなんです。でも、僕達のことは眼中にないんです。山ちゃんをガン見ですよ。
骸骨、顎の骨が外れたんじゃないかと思うぐらい口を開いて、ガン見。
声が聞こえた気がしたもの。
「山崎邦正やったんか!」
って。
「落語はどうした?」
って。
いや、骸骨、しゃべれるかどうか知らないですけど。

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コメント(1)
  • なんかの撮影じゃないすか

    2022/08/27/05:15

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