髪の毛は往々にして怨念を飛ばす

今の世にこんなことがあるのでしょうか。
これは、私の友人の彼氏の話です。

彼氏は地方から首都圏の大学に入学したので、下宿をしていました。彼女とは大学で知り合ったそうです。

そのうち、彼女は彼氏の家に泊まるようになりました。何度か泊まるうちに、彼女は夜寝ていると息苦しさを感じるようになったと言います。首の辺りが締め付けられるようで、思わず首を触っても何ともなかったそうです。
夜中に彼氏を起こしても、彼氏は何も感じないということでした。

しかし、彼氏もその下宿にヘンなものは感じていたようです。
それは、彼氏が夕方から夜に下宿に帰った時、ふと顔を上げて2階の自分の部屋を見ると、電気が点いていないのに、人間の様な影が見えたと言うのです。
電気が点いていないのだから、部屋は暗いのに影が見えたように思ったと。
彼氏が部屋に着くと電気は消えていて、中に入っても誰もいなかったそうです。

それで、彼氏は気のせいだったのだと思ったそうです。

彼女の方は、段々彼氏の部屋に泊まるのがイヤになっていきました。昼間はまだ良いのですが、夜はあの息苦しさ、闇の中の怖さを思うとつい自宅へ帰ってしまったそうです。

ある日、昼間に彼氏の部屋の掃除をしていた彼女は、ベッドの下から髪の毛の塊を見つけたそうです。
それは、何か雑巾の様なものに巻き付いていて、量は何百本といった数だったそうで、ベッド下から引き出した途端、彼女は悲鳴を上げて放り出してしまったそうです。

引き出したその時、髪の毛に女性の顔がぼうっと浮かんだからだそうです。
すぐに彼氏の部屋から逃げたそうですが、その後、その女性の顔がわかったそうです。

彼氏には地元に残してきた交際していた女性がいて、彼氏に会うのをずっと待っていたのだそうです。
恐らく、何に連絡も無くなってしまった彼氏への恨みが募って、彼氏の部屋にやってきたのでしょう。

髪の毛の塊がいきなりベッドの下にあるなんて、ちょっと信じられないことですが、不実なことをすると、こんなことも実際あるのだなと、私も恐ろしく思いました。