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不思議体験

たかぴろんさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

しとどのおっさん
短編 2021/05/01 11:15 6,007view
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そう思い直し、もう一度ライトを穴の中に向けた。
洞窟の入り口から3メートルは離れていたと思う。

男はやはり、そこにいた。彼は裸で、膝を抱えてうずくまり、親指の爪を噛んでいた。
髪は生えておらず、ガリガリにやせ細っていた。

「あの、こんばんは……」

僕が声をかけると、男は「うぅん」と唸った。言葉を喋れないのだろうか?
その瞳は鋭く光り、生命力に溢れている。

「そこで何しているんですか」
「うぅん」

会話にならない。僕は洞窟にはめ込まれている鉄格子を見た。
彼はどうやって中に入ったんだろう?

近づいて、それに鍵がかかっているのか確認したかった。

「お腹空いてないですか」

僕はついそんなことを尋ねた。
それほど、彼の肉体は僕の同情をひいたのだ。
しかし返答はなかった。もう一度ライトでおじさんを見ようとして、僕は目を剥いた。

そこにはもう、誰もいなかったからだ。

近づいて扉を開けようと試みたけれど、

やはり鍵がかかっていてびくともしなかった。

急に恐怖が押し寄せてきて、僕はバイクに跨ると
全速力で来た道を引き返した。

切り裂く風の中に、おじさんの唸り声を聞いたような気がした。

うぅん、うぅん……うぅん…。

今思えば、あれは頼朝の恐怖が形を成したものではなかったか。

「シトト」が鳴く直前まで感じていた頼朝の恐怖と絶望がふと零れ落ちてそこに留まったもの、それが僕の見た謎のおじさんの正体ではないだろうか。

もちろん、これはただの想像に過ぎず、本当のところどうなのかは分からない。

それにしても、心霊スポットでもなんでもない場所で、あんな恐怖体験をするなんて思いもよらなかった。今では後悔している。

なぜって?
僕はあれ以来、すっかりある幻聴に悩まされ続けているからだ。

2/3
コメント(3)
  • 頼朝はガリガリのおっさんだったのか

    2021/05/08/17:14
  • その後お祓いなどして被害が減ったの?

    2022/09/21/21:32
  • 昔、深夜2時頃椿ラインをSKYLINEで湯河原方向へ下っていて濃霧で司会が2mを切り危ないので途中に停まれそうな広場を見付けて停車して休んでいたら、霧が1ヵ所だけ扉が開くように引いていき1本の道が現れ何処へ繋がってるのか興味が湧きそのまま車で奥へと進むとトンネルが現れ、更に車でトンネルを抜けると司会には無数の石碑や墓の様な物が有り、それと同時になんとも表現し難い悪寒がして全身が身震いして、即座にバックしてトンネルを出てバックで椿ライン迄戻りその場を後にしました。しかし乗っていた3人とも1週間以内に事故に遭いました。私も乗っていたSKYLINEが突如スピンして事故で廃車となり、助手席の友人も対向車線に飛び出して正面衝突して廃車&入院、後部席に居た友人も勤め先の飲食店でガラスコップを洗ってる最中にいきなり割れて手を15針縫う怪我をしました。偶然とは思えません、心霊スポットと知らずに行ってしまいましたが、ヤバ過ぎるスポットです遊びでも行かない方が良いです、私も廃病院探索など肝試しもした事ありますがそんなレベルの怖さではありません。マジで命を落とす可能性有りますので近寄らない事が一番です。

    2023/09/30/05:48

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