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GENGOさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

木が泣いた
短編 2021/03/30 14:39 3,429view

木を切り終えた日の夜、祖父は晩酌をしながら
「木が泣いた。」
とぶつぶつと、つぶやき始めた。
私はお気楽に「木が泣くワケないじゃん」
とか言ったと思う。
そういうことじゃない、と祖父は話し始めた。

まれに木を切り倒したときに、妙な音が、
まるで人の泣き声のような音が聞こえることがある。
それをこのあたりの人間は
「木泣き」とか「木が泣いた」

とか言うのだと。
私は「えー俺、聞いてみたいな。」
みたいなことを言って祖父にたしなめられた。
木泣きが聞こえると、よくない事が起こるのだ、と。

祖父が木泣きを聞いたのは今日で二度目。
一度目は、村の神社の御神木を切り倒したとき。
樹齢百年以上はある大木だったが、枯れかけてきて、
倒れて来たら危険なので止む無く切り倒した。
その時、木が倒れる音に混じって、
泣き声が聞こえたような気がした。

その直後に大雨が降りだし、川が氾濫し、
川に隣接した製材所が潰れてしまった。
今日、あの時と同じ声が聞こえた、と。

その時には正直、話を信じはしなかった。
木が倒れる音やチェンソーの音がたまたま泣き声っぽく
聞こえただけなのじゃないかと。
今のところ、雨は降っていないし、
製材所が潰れたのも儲からなかったからだろうし。

だがそれから数日後の大雨で山の一角で崖崩れが発生した。
国道が塞がれて、修復まで随分と時間がかかることになった。
その崩れた場所は、祖父が木を切って「木泣き」を聞いた場所だった。

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